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初動対応マニュアルの作成 第8話「緊急対応 – 建物の安全確認」

[fa icon="calendar"] 2019/02/21 9:00:00 / by 高荷 智也

高荷 智也


 blog_建物の安全確認

  シリーズ「初動対応マニュアル」9回目となる今回は、「建物の安全確認」について解説します。例えば大地震が発生した際、建物の耐震性と揺れの強さの組み合わせにより、ビル・店舗・工場などが大きな被害を受け、内部への立入が危険になる場合があります。特に大地震直後は大きな余震が発生する可能性が高いため、1回目の揺れで無事であった建物が、2回目・3回目の揺れで倒壊したり、内部に被害を生じさせたりすることもあり得ます。

 建物が古く、地震の揺れで明らかに損傷しているような場合は、すぐに屋外へ避難する必要がありますが、逆に新しい建物で火災も発生していない場合は、建物の内部にとどまった方が安全であることもあります。建物の中に留まるべきか避難すべきか、また安全確認を自社で行うのかビルメンテナンス会社へ問い合わせるのか、状況に応じたフローをまとめておくことが、この項目の内容です。

  

建物の耐震性について

 建物の地震に対する強さは、建築基準法の耐震基準によって定められています。この耐震基準は、大きな地震被害が生じるたびに見直されていますが、特に「198161日」に改正された通称「新耐震基準」を満たしているかどうかが重要です。この日付よりも後に「建築確認」を受けた建物はこの新耐震基準で設計されているため、震度6強の直撃を受けても、即倒壊する可能性は低くなっています。

 過去の大地震においても、新耐震基準を満たす建物が倒壊する割合は低いという調査結果が出ており、まずは自社の建物、事務所・店舗・工場などが、これを満たしているかどうかを確認することが重要です。なお198161日という日付は、建物が完成した日付ではなく、建築確認を受けた日付が基準となります。1981年築の建物の場合、「旧耐震基準」で建てられている可能性が高いため、注意が必要です。

 自社の建物が旧耐震基準である場合は、耐震診断を受けるなどして、必要な耐震性を持っているかどうかを確認してください。建物が旧耐震基準であり、かつ耐震性が低い建物の場合、大地震の直撃または余震が発生した際に倒壊する可能性が高くなるため、素早く屋外へ避難する準備が不可欠となります。もちろん予算が許すのであれば、耐震性の高い建物へ移転することが最良の防災対策です。


建物の安全確認の方針について

 防災センターなどがあり、ビルメンテナンス会社が常駐しているオフィスビルや商業施設へ入居している場合、大地震発生後に建物内部へ留まるべきか避難すべきか、原則としてビルの管理者へ問い合わせることになります。ビル側からアナウンスが出される場合もありますが、連絡が無かった場合にどこへ問い合わせればよいのか、連絡窓口を確認してマニュアルへ記載しておくとよいでしょう。

 一方、ビルメンテナンス会社が常駐していない小さな建物に入居している場合、あるいは自社で保有・管理している建物の場合は、大地震直後の安全確認を自社で行う必要があります。誰の目にも明らかなほど損傷を受けていたり、いまにも倒壊しそうな状況であれば大至急屋外へ避難することになりますが、「一見問題なし」「壁に亀裂が入っているがそれだけ」などの場合は判断が必要になります。

 建物の施工会社や管理会社の担当をすぐに呼ぶことができればよいのですが、大地震の場合はそうも行かず、専門的な被害状況の確認には時間がかかります。そのため、自力で建物の安全確認を実施するための簡易診断の手順リストや、被害状況を書き込むためのフロア図などをマニュアルへ入れておくことが重要です。

 

応急危険度判定を参考にした簡易フロー

 この簡易診断マニュアルを作成するためには、建物の施工会社やデベロッパーの協力が必要ですが、独力で作成しなければならない場合は、都道府県などが実施する「応急危険度判定」の手順や項目が参考になります。応急危険度判定は、大地震後の余震による建物の倒壊、外壁や看板の落下などによる二次災害を防ぐため、建物を簡易診断し、状態をラベルで張り出すことを目的に実施されるものです。例えばRC作りの応急危険度判定は、以下の様な流れで実施されます。


判定1
)一見して建物が危険か否か

 (1) 建物の崩壊・落階はないか
 (2) 基礎の破壊・建物とのズレはないか
 (3) 建物の著しい傾斜はないか
 (4) その他の危険はないか

→上記いずれかに該当する場合は、「危険(赤ラベル)」とし、建物内への立入を禁止、屋外避難とする。建物内に資機材を取りに入ることも原則として禁止する(余震などが発生した場合、倒壊に巻き込まれて死亡する恐れがあるため)。などの対応が必要です。

判定2)周辺の状況・構造躯体の状態

 (1) 著しい損傷を受けた部材がないか
 (2) 隣接する建物や周辺の地盤に問題はないか
 (3) 建物沈下や傾斜はないか
 (4) 柱に被害が生じていないか


判定3
)落下物・転倒物の状況

 (1) 窓枠や窓ガラスの状態はどうか
 (2) 外装材が剥がれたり落下したりしていないか
 (3) 看板や機器類が落下していないか
 (4) 屋外階段が損傷していないか

→上記(2)(3)について総合的な判断をして、「要注意(黄ラベル)」「調査済(緑ラベル)」の判定を行う。

 これら、建物そのものと内部の状況を参考にして、内部に留まるべきか、屋外へ避難すべきかを判断します。この基準や、チェックポイントなどをマニュアルへまとめておくとよいでしょう。

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