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企業の「感染症パンデミック」への備え(状況編)

[fa icon="calendar"] 2020/03/05 10:00:00 / by 高荷 智也

高荷 智也


感染症パンデミックの企業の備え 

 前回の「新型コロナウィルス感染症について(感染防止対策編)」に引き続き今回は、企業における感染症対策・パンデミックBCPを解説します。この記事ではパンデミックの概要を説明します。

 

■そもそも「感染症によるパンデミック」とはどういう状況なのか

目下流行中で終息の目処がたっていない、2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、2009年の新型インフルエンザパンデミックなど、しばしば発生して世間を騒がせる感染症。ときおり「パンデミック」という言葉が使われますが、感染症によるパンデミックとは、どのような脅威なのでしょうか

 

  • 感染症の「世界的な大流行」が「パンデミック」

 パンデミックとは「世界的な大流行」を意味する言葉です。使われ方としては、新型インフルエンザや新感染症が全世界で同時に流行し、多くの感染者・死亡者が発生するような状態になると、WHO(世界保健機関)から「パンデミックが発生した」と宣言されます。

※従来は「6段階のパンデミックフェーズ」が設定されており、フェーズ6をパンデミック状態としていましたが、現在は廃止され、総合的な状況により「パンデミック宣言」が出されるように改められています。

企業視点では、感染症がパンデミック状態になると、感染することによる従業員および家族に対する死傷者の発生。数週間から数ヶ月にわたる欠勤者の増加や、経済活動の停滞による営業不振といった影響が発生するため、大地震や浸水害と同じ経営リスクとして、BCP策定などの準備が必要になります。

 

■「感染症によるパンデミック」は何が問題か

 感染症がパンデミックを引き起こすと、企業経営にはどのような影響が生じるのでしょうか。パンデミックを自然災害と捉えた場合の問題点、BCP策定時に前提とすべき事項を紹介します。

  • 従業員が感染して入院・死亡してしまう

 直接的な影響としては、従業員が直接感染症に感染してしまうことが考えられます。例えば、政府が作成した、新型インフルエンザパンデミックの被害想定では、次のような人的被害想定がなされています。

罹患者

全人口の最大25%(3,200万人)

致死率

0.53%(中程度)

2.0%(重度)

入院患者数

53万人

200万人

死亡者数

17万人

64万人

表)新型インフルエンザ等政府行動計画・被害想定


 流行する感染症の特性、感染方法、重症化しやすい年代などは、ウイルスや細菌の種類により異なりますので、はっきりと想定することはできません。しかし、最悪の場合はこのような被害が発生することもあり得る、それが感染症パンデミックの大きな問題なのです。

 

  • 従業員が出勤できなくなる

 パンデミック状態になると、感染していない従業員も出勤ができなくなる恐れがあります。家族が感染して看病のため出勤できなくなる、学校や保育所が閉鎖されたり、介護サービスが停止したりして、子どもや介護が必要な家族の面倒をみるために出勤できなくなる、といった状況です。

 また、感染防止対策として、時差出勤の推奨、鉄道の間引き運転などが行われる可能性もあり、これらも定時出勤が難しくなる要因となります。政府の被害想定では、流行のピーク期間である8週間程度の間、様々な企業において最大で従業員の4割程度が出勤できなくなる恐れがあると想定しています。最悪の場合、パンデミックBCPでは平時の6割の人員で業務を維持することが求められるのです。

  • 取引先や顧客にも影響が生じる

 自社の従業員が出勤できなくなるということは、当然ながら仕入先・外注先などの取引先においても、同じような状況が発生する可能性があります。また、国内単体で発生する自然災害と異なり、世界規模で同時に進行するのがパンデミックの特長となりますので、事業の要素として輸出入が重要である場合は、これらにも影響が生じる可能性があります。

 また自社の主力事業がいわゆる「不要不急」でない業種である場合は、そもそも営業が成り立たなくなる恐れがありますし、感染防止のために外出制限などが行われる可能性があるため、やはり客足という点では鈍くなることが考えられるのです。

 

  • 電気・ガス・水道などのライフラインは維持される

 一方ライフラインは維持される想定になっています。感染症対策で重要な「外出を控える」という対応を行うためには、ライフラインが維持されることが絶対条件となるため、政府行動計画でもこれらの維持には優先的な対策が取られています。大地震や浸水害と異なり、通信・電気・ガス・水道などは利用できる前提で計画を立ててよいでしょう。

 一方、流通網(トラック輸送・宅配便など)や、通勤手段(鉄道・バス)などは、パンデミックのピーク時に利用が制限される恐れがあります。人手が足りなくなることによる営業制限、また感染防止対策による運行の間引きなどが原因です。そのため仕入や通勤に影響が出ることを想定した計画が必要になります。

 

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Topics: BCP情報, パンデミック

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