ちまたに溢れる防災トリビアや防災グッズの噂、それホント?という様々な情報を実験・検証するシリーズ「自腹で検証!防災の噂」です。今回は、「停電時の冷蔵庫」についてご紹介します。
9月に入り台風シーズンが本格化してきました。九州を襲った台風10号は、幸いにして想定されていたような大規模被害を生じさせずに通過しましたが、各地で停電などの被害が発生しています。停電時に困るのが冷蔵庫、特に夏場の暑い季節には大きな問題となります。
そこで今回は、「停電時したら冷蔵庫はどのくらい持つのか?」を、各種条件で測定して参ります。まず実験の概要と定義は次の通りです。
■実験の条件
実験に用いたのは、アイリスオーヤマ製の冷蔵・冷凍庫。自炊をする一人暮らしが使いやすいサイズで142リットルの容量です。なぜアイリスなのか、それは国産冷蔵庫で一番お安かったからです。上段が冷蔵庫、下段が冷凍庫になっています。これに、5分間隔で温度を自動記録してくれるデータロガーを入れて、停電後の温度変化を測定します。また測定機が増えました…。
■実験の内容
今回行った実験は、「よく冷やした冷蔵庫・冷凍庫」が突然停電したと仮定し、「何時間もつのか?」測定です。この「何時間持つのか」の定義は次の通りです。
- ①冷蔵庫:4度以下を何時間キープできるか(冷蔵庫の標準性能)
- ②冷蔵庫:10度以下を何時間キープできるか(JIS規格による冷蔵庫の最低能力)
- ③冷凍庫:-18度以下を何時間キープできるか(JIS規格による冷凍庫の最低能力)
- ④冷凍庫:0度以下を何時間キープできるか(冷凍庫の最低条件)
冷蔵庫・冷凍庫の停電後、この温度を突破するのにどのくらいかかるのか(どのくらい耐えるのか)を測定していきます。
状況比較するため、次の4パターンのケースで比較をしました。
- ケース①…空の冷蔵庫を冷やして、停電後放置・計測
- ケース②…中身を半分入れた冷蔵庫を冷やして、停電後放置・計測
- ケース③…中身を満タンにした冷蔵庫を冷やして、停電後放置・計測
- ケース④…中身を満タンにした冷蔵庫を冷やし、停電直後に、冷凍庫の中身を一部冷蔵庫に移して放置・計測
という具合です。中身の量によって温度をキープできる時間が変わるのか。また防災トリビアとして良く言われる「停電したら冷凍庫の氷を冷蔵庫に移せば、冷気が長持ちする」は本当なのか、について検証をして参ります。
■ケース①・空の冷蔵庫の停電時温度変化
まずは比較用として、空っぽの冷凍庫の保冷能力を測定しました、結果は次の通り。
空の状態であっても、数時間は冷気をキープしました。冷蔵庫が10度に達したのが2時間50分後、冷凍庫が0度に達したのが5時間10分後でした。冷蔵庫は通電していないと、あっという間にぬるくなる印象もありますが、どうやらクーラーボックスとして高い性能を持っている様です。
■オマケ資料…常温の水が完全に凍るまでの時間
実験では常温になった水道水をペットボトルに入れて凍らせましたが、冷凍完了までの経過時間をグラフで示すと次のようになります。冷凍庫半分に入れた場合は、全て凍るまでおおよそ1日。冷凍庫を満タンにした場合は2日程度かかりました。もちろんこれは、中身全てが常温の場合ですので、すでに電源が入っている冷凍庫に凍らせたい物を入れた場合は、もう少し早く凍ると思われます。
それでは、実際に中身が入っている冷蔵庫・冷凍庫の停電測定結果は、次回のコラムでご紹介いたします!お楽しみに!
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