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防災のキホン:避難所生活の現状と対策(前編)

[fa icon="calendar"] 2021/04/13 10:00:00 / by 高荷 智也

高荷 智也


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 新年度を迎えた2021年ですが、今年は年始から大きめの地震が続いています。2021年2月13日に福島沖で最大震度6強・M7.3の大地震が発生した後、3月15日には和歌山北部で震度5弱を観測、3月20日には宮城沖で最大震度5強・M6.9の大きな地震が発生しました。
幸いこれらの地震では、大震災級の被害は生じておりませんが、より大きな地震が発生し被害が拡大した場合は、避難所などで生活をすることも生じ得ます。今回は、この避難所に関する現状と、事前に行いたい準備について紹介します。


■「避難先」の種類

大地震や洪水などが発生した際には「避難」が必要になることがありますが、「避難先」には種類が2つあります。ひとつは「避難場所(指定緊急避難場所)」と呼ばれ、津波・洪水・土砂災害などが発生した際に「命を守る」ために逃げ込む場所です。災害の種類ごとに場所が異なりますので、ハザードマップを使って最寄りの避難場所を把握しておくことが重要です。
もうひとつは「避難所(指定避難所)」で、こちらは地震で家が倒壊したり、台風でライフラインが停止した場合など、自宅で生活ができなくなった人が一時的に身を寄せる生活の場所です。こちらは原則として最寄りの学校や公民館などの公共施設が指定されます。今日はこの「避難所」についてのお話をいたします。

■「避難所(指定避難所)」へ行くことは義務なのか

避難を義務づける法律などはありませんので、避難場所・避難所共に移動するかどうかは個人の自由となります。「避難場所」はそこへ移動しなければ死ぬ可能性があるため、できれば早目に移動することが望ましいのですが、「避難所」については自宅が無事であれば移動する必要はありません。避難所は、あくまでも自宅で生活ができなくなった場合に、一時的に身を寄せる場所です

また、避難場所は屋内だけでなく屋外も指定されますので、地域内に津波・洪水・土砂災害などの危険がある場合、基本的には住民全員を収納できるように計画されます。一方、避難所は屋内で生活をする場所になるため、定員はかなり限られます。例えば東京都の場合は、人口約1,400万人に対して受入可能率は23.7%、大阪市の場合は、人口約275万人に対して、受入可能率は22.2%です。

とくに、マンションなど「倒壊が想定されていない建物」の住民については、避難所の対象外となっていることも多く、実際には多くの方が自宅で生活を継続することになります。また自治体が準備する防災備蓄品についても、基本的には避難所の定員を基準に準備をしますので、少なくとも自宅が無事である場合、避難所で物資だけもらうということも、難しい可能性が高いのです。

■避難所の環境に関する問題点

日本の避難所は、最大7日間を目安とした短期滞在が前提になっており、その後はライフラインの復旧に伴い自宅に戻ったり、仮設住宅へ移動したりという計画になっています。そのため、避難所の環境として計画されている内容は、必然的に劣悪なものになりがちです。

例えば、国際的な人道支援活動を行う際の、衛生・栄養・住居・医療・その他の必需品などの最低基準を示したガイドラインとして、「スフィア・プロジェクト」というものがあります。このガイドラインに示されている避難施設・難民施設の環境と、日本の避難所運用ガイドラインが定める環境を比較すると、以下の表のようになります。

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この表だけを見ると、日本の避難所はひどい、政府の怠慢だと憤りたくなりますが、これは前述の通り、この環境で生活をするのが最大でも7日程度という前提になっているためです。一方スフィア・プロジェクトでは難民キャンプなど数日~数年の生活が前提となる環境を想定しているため、このような差が生じています。問題なのは、この日本の避難所に、数週間~数ヶ月間滞在するようなケースが生じている現実なのです。

最低現を想定した避難所で、長期間生活をすれば当然ながら各種問題が生じます。食中毒やインフルエンザ、現在進行系としてはCOVID-19などの感染症の問題。夏の暑さ、冬の寒さ、プライバシー確保などの環境問題。盗難や犯罪などのトラブル行為。また食物アレルギーや、慢性疾患の悪化、エコノミークラス症候群などは、最悪の場合「災害関連死」をもたらすこともあります。

このような事態を避けるために必要な対策について、後編のコラムで解説をいたします。

 



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