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防災のキホン:避難所生活の現状と対策(後編)

[fa icon="calendar"] 2021/04/27 10:00:00 / by 高荷 智也

高荷 智也


防災備蓄  

 前回のコラムでは、日本における「避難所(指定避難所)」の構造的な問題点についてご紹介をいたしました。今回は、この厳しい避難所生活に対応するための、ひとつの対応策についてご紹介いたします。

■被災地から一時的に離脱をする

 避難所生活により生じる問題を回避するため対策として最良の方法は、「そもそも避難所へ行かない」ことになります。最もよいことは、被災地から一時的にでも離脱し、短期的な疎開をすることです。特に、医療上の問題で、避難所で生活をすることや、ライフラインが停止した自宅に留まることが難しい場合は、被災地の外へ移動することが選択肢となります。

 家族・親戚・知人が離れた場所で暮らしている場合は、被災時に助け合うことを事前に相談しておくことが有効です。また、短期的に被災地の外へ旅行に行く、ホテル暮らしをするなどの対応も考えられます。しかし、全ての人が遠方に拠点を作ったり、お金をかけて生活拠点を移動させたりすることができるとは限りませんし、仕事や学校の関係で疎開が難しいという場合もあり得ます。


■自宅で在宅避難をする

 そのため現実的には、自宅で「在宅避難」をするための準備が必要になります。大地震などで自宅が倒壊しておらず、水害などで自宅が水没しておらず、土砂災害にも巻きこまれていなければ、防災備蓄品を活用して自宅での被災生活を継続することができ、避難所へ行く必要がなくなります。またCOVID-19などのパンデミックが発生している様な状況においては、感染症対策としても在宅避難が有効になります。

 在宅避難は、何かしらのインフラが停止した状態で、自宅での生活を行う行為です。電気・ガス・水道などのライフラインの停止、あるいは道路などの破壊で店舗に商品が入らなくなったり、買い物に行けなくなったりしている様な状態が想定されます。このような状況に対して、必要な各種の物資を事前に備蓄しておくことが、在宅避難への備えになります。


■在宅避難のための準備

 在宅避難の実施は、自宅が無事であることが前提条件です。そのため究極的には、津波・洪水・土砂災害などの影響を受けない場所にある、地震で潰れない家に住むことが必要となります。さらに、大地震で室内がメチャクチャな状態になってしまうことを防ぐために、家具の転倒防止、家電の移動防止、荷物の落下防止、ガラスの飛散防止といった室内対策を講じておくことが重要です。

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 こうした対策は、在宅避難にも必要ですが、大地震や大規模洪水などで即死しないための準備としてももちろん有効です。これらの対策を講じたうえで、さらにインフラ停止に備えた各種の備蓄品の準備を行うことになります。


■防災備蓄品の準備

 備蓄品は、「最低3日分」「できれば7日分」を目安に準備します。災害発生から3日間は、人命救助の行政のリソースが多く割かれるため、被災者への支援が本格化するのが4日目以降であること。また首都直下地震や南海トラフ巨大地震の様に、被災者が膨大になることが想定される災害が生じた場合は、満足な支援開始まで1週間程度の時間が必要になる想定であることが理由です。

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 最重要な備蓄品は、持病の薬やお薬手帳、メガネ・補聴器・入れ歯と言った「体の一部」です。防災対策以前に、それがなければ生活ができないというアイテムがある場合は、スペアや代用品を必ず準備しておきます。こうした物品は避難所で入手することが難しく、できたとしても時間がかかることが多いため、事前準備が不可欠です。

 また、電気・ガス・水道などのライフラインを代替するための準備も必要です。非常用トイレ、カセットガスとコンロ、体を拭ける大判のウェットティッシュなどを準備して、停電や断水の解消、あるいは給水支援の開始などを待つことになります。特に都市部のマンションなどでは、非常用トイレがなければ生活ができないため、最低1週間分程度のトイレを備蓄するようにしてください。

 そして、食料・飲料水・日用品などの消耗品を備蓄します。こうしたものは、防災専用の非常食などを購入してもよいのですが、総じて価格が高く入れ替えの手間もかかりますので、「日常備蓄」の手法で準備するのがおすすめです。普段から食べたり飲んだり消費しているものを、「少し多めに購入し、なくなる前に補充する」ことを繰り返すだけで、自然と備蓄が完了するスタイルになります。

 できれば災害に遭遇することを避けたいものですが、日本の場合はいつでも誰でも被災者になる可能性があります。日頃からの防災対策、防災備蓄を、ぜひ取り組んでください。



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