今回のコラムでは前編に引き続き、国土交通省の「重ねるハザードマップ」の使い方、2021年版の最新解説と、落とし穴の回避方法をご紹介いたします。
■洪水情報を確認する際には、「新旧」情報全てをONにする
まず「重ねるハザードマップ」を開いてください。
画像は、横浜駅周辺の地図を表示させて、「洪水」ボタンを押した状態です。一見すると「浸水」の色がつきませんので、洪水に対しては安全なように見えます。…が、ここに落とし穴があります。
情報を表示する枠の上段には「災害リスク情報」タブと「表示中の情報」タブの2つが並んでいます。ここで「表示中の情報」タブを押すと、画面に表示させる情報のON/OFF切替を行うことができるようになります。そして、「洪水」ボタンの初期設定は「洪水浸水想定区域(想定最大規模)」だけがONになっています。
ここで、その下にある選択肢「洪水浸水想定区域(計画規模(現在の凡例))」をONにしてみます。特になにも変わりません。
さらに、その下にある、「洪水浸水想定区域(計画規模(旧凡例))」をONにすると…地図に色がつきました。どうやら横浜駅周辺は洪水が発生した場合に、浸水が生じる恐れのある地域だったようです。どういうことでしょうか?
ハザードマップは定期的に、災害基準の見直しや追加が行われます。現在「洪水ハザードマップ」を作成する際には、「想定最大規模」と呼ばれる、1000年に1回程度の「超大雨」が降った場合の基準が使われています。生じる可能性は低いものの、とにかく最大規模の災害が生じた場合を想定したハザードマップが整備されているということです。
しかし、以前のハザードマップでは、10年~100年に1回程度の「そこそこある大雨」を基準とした「計画規模」の基準で地図が作られていました。さらに凡例(地図上の色)も2015年に見直しがされたため…
- 想定最大規模(現在の凡例)
- 計画規模(現在の凡例)
- 計画規模(旧凡例)
という3つの選択肢がハザード情報として用意されており、初期状態は「想定最大規模」が表示されるのですが、更新が追いついていない自治体については、「計画規模」のボタンを押さないと以前のハザード情報が表示されないということになっているのです。
そのため、洪水情報を確認する際には、「表示中の情報」タブを開いて、これら3つの洪水情報を全てONにするようにしてください。また、「凡例」ボタンを押せば、新旧それぞれのハザード情報で表示される「色」の意味を確認することができます。
■浸水継続時間について
さらに、洪水の「選択中の情報」には別の情報も存在します。
例えばこちらは「浸水継続時間(想定最大規模)」です。これは最近のハザードマップに新しく追加されるようになった情報で、洪水による浸水が発生した際、「どのくらいの時間、水が引かないか」を表す情報です。
土地が周辺より低い場所、とくに河川・海岸の堤防よりも低い場所については、自然に排水されることがないため、ポンプで強制排水をするまで水が残り続けることになります。停電などが発生するとポンプ排水を行うこともできないため、長期間水に沈んだままとなる可能性があるのです。
ただ、この「浸水継続時間」については、順次反映エリアが拡大している最中ですので、自治体が作成するハザードマップとあわせて、参考情報にするのがよいです。
■家屋倒壊等氾濫想定区域について
最後に「家屋倒壊等氾濫想定区域」について説明をします。こちらも「洪水」ボタンの「表示中の情報」タブから閲覧する情報で、2種類の選択肢があります。
- 家屋倒壊等氾濫想定区域…「氾濫流」
- 家屋倒壊等氾濫想定区域…「河岸浸食」
「氾濫流」をONにすると、丸いつぶつぶのエリアが表示される場合があります。これは、堤防が決壊するなどして洪水が生じた場合、木造住宅が水の勢いでバラバラに破壊される可能性のあるエリアを示したものです。
このエリアの木造住宅にいる場合は、浸水をまぬがれるために建物の2階や屋根に逃げたとしても、建物自体の倒壊リスクがあるため、基本的には事前避難が必須となります。
さらに「河岸浸食」をONにすると、赤く塗りつぶされたエリアが表示される場合があります。こちらはさらに深刻で、洪水により川岸が削られて、木造・非木造に関わりなく、頑丈なマンションなどの建物も地盤ごと倒壊する恐れがあるエリアを示したものになります。
もし自宅や職場が、この「河岸浸食」のエリア内に立地する場合は、建物ごと持って行かれる可能性があるため、事前避難が必須になるということになります。
といういうとこで今回は、「重ねるハザードマップ:洪水」に関する利用ポイントをご紹介しました。
次回以降、さらに津波・高潮・土砂災害についての解説をいたします。
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