ちまたに溢れる防災トリビアや防災グッズの噂、それホント?いう様々な情報を実験するシリーズ「自腹で検証!防災の噂」、今回のテーマは、「非常用浄水器」です。
汚れた水がこんなに綺麗に!という見た目のインパクトが強い防災グッズ、非常用浄水器ですが、人間の生存に不可欠な「水」を作り出せる道具ということもあり、しばしば防災対策用品としての導入が検討されるアイテムです。
実際、皆様のご自宅や職場でも、非常用浄水器の導入について考えたことがあるかもしれません。しかしこのアイテム、利用する目的やシーンに合わせて正しく選ぶ必要があります。
今回は非常用浄水器選びの基本をご紹介します。
■非常用浄水器の性能について
非常用浄水器の性能は、多くの部分がろ過膜(フィルター)で決まります。非常用浄水器に求められることは、水以外の不純物を取り除くことですが、非常用浄水器はろ過膜を使って不純物をブロックしますので、行ってみれば「フィルターの目の細かさ」により、ほとんどの性能が定まると言えるのです。
では、非常時に「飲めるようにしたい」水には、どのような不純物が含まれているのでしょうか。大きな方から順番に並べますと、おおよそ次の様になります。
●寄生虫や原虫(アニサキス・エキノコックス・赤痢アメーバ…)
▶ 大きさは10~1マイクロメートル
● 細菌・バクテリア(大腸菌・赤痢菌・チフス菌・コレラ菌…)
▶ 大きさは1~0.1マイクロメートル
●ウイルス(インフルエンザ・新型コロナ・ポリオ・天然痘…)
▶ 大きさは0.1~0.01マイクロメートル
● 農薬・有機物(ダイオキシン・環境ホルモン…)
▶ 大きさは0.01~0.001マイクロメートル
●イオン・金属(塩素・ナトリウム・マグネシウム・放射性物質…)
▶ 大きさは0.001~0.0001マイクロメートル
これら、大小様々な物質が水に溶け込んでおり、非常用浄水器はこれらのうち人体に
有害となる不純物を取り除くことで、飲料水を作り出すことになります。
■ろ過膜の性能について
非常用浄水器に使われるろ過膜にはいくつかの種類がありますが、いわゆる目の細かさによって性能や用途が変わります。
● MF膜(精密ろ過膜)
▶ 多くの非常用浄水器で用いられるろ過膜で、細菌などを除去することができるが、
ウイルスより小さな物は通過させてしまうため、ウイルス・化学物質・金属イオンなど
を取り除きたい場合は、より高性能なろ過膜が必要になる。
● UF膜(限外ろ過膜)
▶ 細菌やウイルスなどを除去できるフィルター。
● NF膜(ナノろ過膜)
▶ 細菌・ウイルス・化学物質などを除去できるフィルター。
● RO膜(逆浸透膜)
▶ 水に溶けているあらゆる物質を取り除くことができるフィルター。
逆の言い方をすると、水分子しか通過させないフィルターであり、
H20が主体の液体であれば、地球上にあるどのような水でも飲料水に変えることが
できる。非常用浄水器に用いる場合は最も性能が高い。中東や淡水に乏しい島国では、
海水の淡水化などにも大規模に使われている。
● セラミックフィルター
▶ 性能的にはMF膜に準じるため、それほど高性能とは言えない。
● 活性炭フィルター
▶ 他のろ過膜と併用して使われるもので、これ単体では細菌なども取り除くことは
できない。
例えばこの非常用浄水器は、MF膜を用いており、原虫や細菌などをブロックする
ことができます。
写真に写っているのは「粉の青汁」をろ過して無色透明にした水です。
入浴剤を入れていない風呂の残り湯、水質検査済(飲用可)の井戸水、
古くなった備蓄水や水道水など、元々飲める水を安全にする際にはこのような
非常用浄水器が活用されます。
なお、多くの非常用浄水器には、「中空糸フィルター採用」などの文言がありますが、これはフィルターの種類ではなく形状を示す言葉です。中空糸MF膜もあれば、中空糸RO膜もありますので、中空糸と書かれている場合は、さらにフィルターの種類を確認することが重要です。
■あらゆる事態に備えたい場合
前述の様に、元々飲める水を安全にしたいのであれば、最も一般的に普及している「MF膜」を用いた非常用浄水器を準備するのが、安価・メンテナンスが楽・たくさんの水を早く作れる、という意味合いでオススメです。
一方、出所が不明で、何が含まれているか分からない水…というと怖そうなイメージですが、つまり一見綺麗に見えても上流の様子が分からない河川の水や、水質検査をしていない井戸水などを飲用にしたい場合は、「RO膜」を用いた非常用浄水器を用いる必要があります。
一見綺麗に見える川の水であっても、例えば災害で上流にある工場から排水が流れ込んだり、洪水で保管されていた農薬などが河川に流入しないとは言い切れないためです。これら、あらゆる取水の水を100%安全に処理するためには、RO膜の浄水器が必要となります。
次回後編では、具体的な浄水器選びのポイントや活用についてご紹介します。
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