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非常用浄水器の活用(選択編)

[fa icon="calendar"] 2021/12/21 10:30:00 / by 高荷 智也

高荷 智也


BCP  

 ちまたに溢れる防災トリビアや防災グッズの噂、それホント?いう様々な情報を実験するシリーズ「自腹で検証!防災の噂」、今回のテーマは、「非常用浄水器」です。

 

 前回は、非常用浄水器の性能を左右する要素、ろ過膜の種類についてご紹介しましたが、今回は非常用浄水器の具体的な選び方や活用ポイントについて解説いたします。
 
■携帯浄水器について
非常用浄水器の中で最も小型のものが、携帯浄水器です。防災用途で準備されることもありますが、基本的にはアウトドア用途で用いられる浄水器になります。

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 写真の携帯浄水器は、上段がキッツマイクロフィルター社のスーパーデリオス、下段が渡辺商事のmizu-Qという製品です。いずれもフィルターの口径が0.1マイクロメートルほどと記載されていますので、寄生虫や細菌などの除去は可能ですが、ウイルス・化学物質・金属イオンなどの除去には不足するということになります。

 これらの浄水器は、よく「魚が住んでいる水であれば飲めるようにできる」などの記述がありますが、これは事実でもあり不誠実な表現でもあります。魚などの大型生物が生息している水には、いわゆる毒物となるような化学物質は含まれていない可能性が高く、細菌などを除去すればただちに人体へ影響することはありません。

 一方、例えば放射性物質のような金属が水中に溶け込んでいる場合、魚などが即座に死ぬことはなく、人体が摂取しても「ただちに健康に影響」することもありません。
しかし内部被ばくをもたらすことになるため、長期的には健康に影響を与える可能性がありますが、これらの金属を取り除くためには、前編コラムでご紹介した最も性能のよいろ過膜、RO膜(逆浸透膜)を用いた浄水器が必要になります。つまり、魚が生息しているからといって、100%人体に安全とは限らないのです。

 携帯浄水器は、山間部などで上流になにもない綺麗な川の水を飲んだり、目の前で湧いている湧き水を安全に飲むなど、飲めることが分かっている水を飲むようなシーンで使うべきであり、詳細が不明の水を飲むのには向いていません。


■「普通の」非常用浄水器について
 写真の浄水器は、宮坂工業の「コッくん飲めるゾウ・ミニ(オレンジ)」と「コッくん飲めるゾウ・スリム(白)」です。フィルターには「MF膜」を用いており、寄生虫や細菌などをブロックすることができます。性能としては、前述の携帯浄水器と同程度となりますが、本体およびフィルターサイズが大きいため、フィルター寿命が長く、また大量の水を短時間で処理することができます。

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 このタイプの浄水器も、基本的には「元々飲める水」を安全にするために使われるものであり、どこから持って来たか分からない水や、何が溶け込んでいるか分からない水などを、100%安全にすることはできません。入浴剤の入っていないお風呂の水、降雨直後を除く雨水、水質検査済の井戸水、飲めることが分かっている山の中の湧水などを、安全に飲むために使うことが適しています。

 また、企業や学校などでは、「期限切れペットボトル水」を処理する目的でも使われます。ペットボトル水の賞味期限は、水が飲めなくなる期限ではなく、わずかに水が蒸発することで、水が内容量以下になる期限を示しているため、厳密に言えば期限切れのペットボトル水は特に問題なく飲めます。
 個人であればそれでもよいのですが、企業や学校などで、期限切れの水を提供することは、安全であっても受け入れられないケースがあるため、このような場合は非常用浄水器を使って、ある種パフォーマンス的に水を安全にする行為を行ってみせるということも有効です。


■「RO膜」の非常用浄水器について
 写真手前に写っている大きな浄水器は、RO膜(逆浸透膜)を用いた非常用浄水器で、宮坂工業の「コッくん飲めるゾウ・RO」という製品です。

 水分子しか通過させないRO膜を用いているため、原理上は地球に存在するあらゆる水から、寄生虫・細菌・ウイルス・化学物質・金属・放射性物質などを取り除き飲料水にすることができます。ろ過膜の性能的には海水の淡水化もできますが、製品寿命を縮めるため、メーカーによっては推奨していないこともあります。

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 サイズ・価格ともに大きくなるため、気軽に準備できる物ではありませんが、文字通り「どんな水でも」、生理的には嫌かもしれませんが尿なども飲料水に変えることができますので、非常時にどのような水を使うか分からないという場合は、このRO膜タイプの非常用浄水器を準備する必要があります。


■非常用浄水器選びについて
 非常時に備えて浄水器を準備する場合、水源が明らかな水、元々飲料できるレベルだった水などを処理する場合は、MF膜・UF膜・NF膜などを用いた「普通の浄水器」を準備してください。

 一方、水源不明の水や、中に何が入っているか完全に追えていない水を飲料水にしたい場合は、基本的にRO膜(逆浸透膜)を用いた浄水器を準備する必要があります。
飲料水を作ることは大変です。日頃水道の蛇口をひねればいくらでも飲料水が手に入りますが、これは大変すごいことなのだ、ということを改めて認識し、非常時への備えをお考えください。
 
 なお、水の備蓄の基本は「ペットボトル水」を準備することです。非常用浄水器はあくまでも最後の手段であり、最初からあてにするのではなく、まずは備蓄水を用意するようにしてください。

 

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