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「日本海溝・千島海溝沿いにおける最大クラスの地震」の読み解き方(被害想定編)

[fa icon="calendar"] 2022/01/13 11:00:00 / by 高荷 智也

高荷 智也


地震被害  

 昨年末、2021年12月21日、政府からショッキングな大地震被害想定の発表がありました。日本海溝・千島列島沿いで、津波を伴う巨大地震が発生した際、最大で199,000人に上る死者が発生するという報告書の公開です。


 今回のコラムでは、この報告書の内容や読み解き方、防災対策に生かせるポイントなどをご紹介して参ります。まずは前編として、災害側…被害想定についてのお話をいたします。

 

■この発表タイミングにはどんな意図があるのか?

 このような大規模災害に関する被害想定の発表があると、近々大地震が発生するのではないか…、秘密裏に対策を進めるため発表されたのではないか…、などの裏事情を考えたくなりますが、そういう話ではありません。

 日本海溝・千島海溝沿いにおける地震津波対策は、20年ほど前、2004年に制定された法律に基づいて各種調査や計画が進められており、昨日今日に出てきた話ではありません。長年の調査・検討内容がまとまったタイミングが今だったというだけなのです。
 
 このような被害想定は日本海溝・千島海溝沿いだけではなく、南海トラフ巨大地震や首都直下地震についても同じような報告書が公開されています。2011年の東日本大震災発生後、これらの被害想定の見直しが行われましたが、まず南海トラフ巨大地震と首都直下地震の見直しが行われ、次に日本海溝。千島海溝沿いの見直しが実施され、これが形となって公開されたのが今回の被害想定報告書ということになります。

■大地震が近づいているのか

 今回の被害想定発表と、大地震のひっ迫度合いは別の問題となります。例えば首都直下地震については、今後30年以内の発生確率が「70%」程度、南海トラフ巨大地震についても今後30年以内の発生確率が「70%」と示されています。

 これらに対して、日本海溝・千島海溝周辺で想定されている津波を伴う大地震の発生確率は、今後30年間で「60%」程度とされており、これはかなり高い確率であると言えます。これらの巨大地震については、来るのか来ないのか、ではなく「いつ来るのか」と考えた準備が不可欠です。
 また今回の被害想定で用いられているのは、あくまでも「想定最大規模」の巨大地震であり、「次の」日本海溝・千島海溝沿いの大地震がこのタイプになると考えられている訳ではありません。想定を下回る地震であった場合には、被害想定よりも小さな被害に留まる可能性がありますし、逆に想定を上回る地震が発生しないとも言い切れません。

 報告書でも語られていますが、被害の大きな想定が発表された際、「もうだめだ」「何をしても無駄だ」と諦めたり、いたずらに不安を煽ったりすること無く、できる準備を少しずつ進めることが重要となります。

■死者199,000人とはどういうことか

 今回の被害想定では、想定最大規模の巨大地震が、「日本海溝沿い」「千島海溝沿い」の2箇所で、「①冬の深夜」「②冬の夕方」「③夏の昼間」の3つのシチュエーションで発生したと仮定し、さらに津波による早期避難が「成功」「失敗」した場合について、それぞれ掛け合わせでの被害想定が見積もられています。

 このうち最悪となるパターンが、「日本海溝」で「①冬の深夜」に地震が発生し「津波の早期避難に失敗」した場合の掛け合わせで、この時の死亡者が最大約199,000人となっています。なお、建物倒壊や火災によるししゃも想定されていますが、全体の99%は津波による犠牲と考えられています。
 逆に言えば被害の小さくなる掛け合わせもあり、「日本海溝」で、「③夏の昼間」に地震が発生し、「津波の早期避難に成功」した場合の掛け合わせでは、死亡者の想定が最大約6,000人と見積もられています。このように、地震の発生する場所・規模・シチュエーションに応じて被害の様相は大きく変化しますので、いつくかのケースを比較することが重要です。

■今回の想定で追加された新要素

 前述の通り、今回の被害想定発表前から、南海トラフ巨大地震や首都直下地震の被害想定が、同じような手法で実施され報告書として公開されています。一方、今回の日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震については、北海道~東北という地理的条件も鑑みられ、これまでの被害想定では見られなかった要素が追加されています。

1)流氷による津波被害の拡大

 冬季に津波が発生した場合、流氷の漂着を考慮した被害想定が実施されています。そのため、冬に地震が発生した場合のケースにおいては、建物の全壊棟数が従来の試算よりも増加しているという特徴があります。

2)路面積雪・凍結による避難の遅れ

 同じく冬季に津波が発生した場合、路面への積雪や凍結により避難が遅れ、従来よりも津波による死者数が増加する試算がなされています。このため、従来以上に早期の避難呼びかけなどが重視されています。

3)凍死者の発生

 津波避難時に体が濡れた場合や、屋外に避難を実施する場合、「日本海溝×冬の深夜の地震」については42,000名の「低体温症要対処者数」が試算されています。衣服を着替えさせる、屋内に避難させて暖房を入れる、などの対策を講じない場合は凍死する恐れがあるということで、こちらも新たな対策が求められる項目となっています。

 総じて、冬の北国ならではの事情が多く盛り込まれた被害想定になっていますが、それだけではありません。避難所生活などにおいても新型コロナウイルス感染症を初めとするパンデミック複合災害が考慮されるなど、最新の知見が反映された報告書となっていますので、他の地域の防災対策にも生かせるポイントが多くあります。

 次回のコラムでは、この報告書から考えられる各種の対策について解説をいたします。

 

■参考

内閣府・中央防災会議「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」

http://www.bousai.go.jp/jishin/nihonkaiko_chishima/WG/index.html

※上記ページの「被害想定について(令和3年12月21日発表)」を参照しています。

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