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「日本海溝・千島海溝沿いにおける最大クラスの地震」の読み解き方(防災対策編)

[fa icon="calendar"] 2022/01/20 11:00:00 / by 高荷 智也

高荷 智也


防災対策  

 
 前回のコラムでは、日本海溝・千島海溝沿いで想定される巨大地震の、被害想定に関する解説をいたしましたが、今回は対策編です。最新の報告書から直近の防災対策に生かせるポイントを探して参りましょう。

 今回の報告書で特徴的な内容として、北海道をはじめとする北国ならではの事情を被害想定に反映している点が上げられます。流氷による津波被害拡大、積雪・路面凍結による避難の遅れ、そして津波避難時における凍死者の発生などが特徴的ですが、これらの被害に対する準備は、北海道・東北以外においても重要な要素です。

 ■津波に飲まれない対策

 流氷による被害は他の地域では想定されづらいですが、「津波が来ても浮いて待てば良い」という考え方をしている場合、これは危険です。津波は「大きな水の固まり」ではなく、様々なガレキ含む「移動するガレキと海水の混合体」であるからです。
 流氷のない時期・地域においても、津波には破壊された建物、流された設備、車両や船舶を初め、様々なものが含まれます。ライフジャケットなどを着込んでいたとしても、流されてきた建物や車両にぶつかったり、流出したガソリンや化学物質に飲まれたり、海水以外の要素に飲み込まれると助かりません。
 最悪の場合は浮いて待つのではなく、津波に追いつかれないようにあらゆる準備を実施するという考え方が重要になります。どうしても避難が間に合わない地域においては、津波シェルターの導入なども検討し、とにかく生身で津波にのまれないようにする準備が不可欠です。

■早期避難の対策

 路面への積雪・凍結による避難の遅れは、北海道や東北はその確率が高いというだけで、冬季であればどこでも発生する可能性のある状況です。むしろ、普段雪が降らない地域において積雪があると、交通網や道路などがマヒ状態となりますが、この状況で地震や津波が発生した場合、雪への準備がない分、雪国よりも大きな問題となる可能性も高くあります。

 被害想定の条件を厳しくすると、どこまでも検討を続けなければならい状態になりますが、日本の場合「大雨+大地震」「噴火+大地震」「積雪+大地震」などの同時発生は、それほどあり得ない状況とは言えず、自宅や職場周辺でこうした複合災害の要素がそろっている場合は、こうした「より厳しい状況」に対する準備が必要となります。
 
 災害種別ごとの避難場所をハザードマップで確認すること、必要な荷物を積めた非常持出袋などを日頃から用意すること、またできるだけ自宅を安全な場所・室内環境とし、発災時に避難場所ではなく自宅に留まれるようにすることなどは、重要な対策といえます。もちろんこれは家庭だけでなく、オフィスや事業所でも同様です。


■冬の暖房対策

 同様に、凍死に関する問題も北海道・東北に限定されるものではなく、時期や気候状況によっては普段温暖な地域でも生じる可能性があります。冬場の防災対策の一環として、水濡れ時の着替え、暖房器具、食べ物を温める道具などを準備しておくことは、どこであっても必要な対策と言えます。もちろん気温の低い日が多い地域は特に重要となります。
 
 水濡れ対策は大地震による津波対策だけでなく、台風・大雨避難においても重要ですので、非常持出袋に濡れないようにしたタオルや着替えを常に入れておくことは有効な準備です。リュックの容量が限られる場合は、下着だけでも交換できるようにし、上着はレインウェアなどを雨具兼用として着用できるようにしてもよいでしょう。

 
 また在宅避難用には、停電時の調理・暖房用に、カセットガスボンベを用いたカセットガスコンロや、カセットガス暖房器具などを準備すると役立ちます。寒い状況で冷たい食べ物を食べることは危険です(実際に氷点下の環境で、温度0度のカレーを食べる検証を行いましたが、体が動かなくなりました…)、体の中と外から温める道具を、命を守る準備として行ってください。


■基本的な対策も継続する

 日本は地震大国であり、北海道から沖縄までいつでもどこにでも大地震が発生します。詳細な被害想定が出されている、南海トラフ巨大地震、首都直下地震、そして今回ご紹介した日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震、これらの地震以外も突発的に発生いたします。
 
 自分は北海道・東北に住んでいないから関係が無い、と言うことにはなりません。こうした最新の被害想定報告書は、新しい災害の知見が盛り込まれた良質な防災の手引き書という側面も持っています。建物の耐震化・引越し、室内の家具固定、ハザードマップの確認、非常持出袋の作成など、基本的な対策ができているかを改めて見直し、自宅と職場の防災を改善してください。


■参考
内閣府・中央防災会議「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」
http://www.bousai.go.jp/jishin/nihonkaiko_chishima/WG/index.html
※上記ページの「被害想定について(令和3年12月21日発表)」を参照しています。

 

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