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核兵器・核シェルターの基礎・後編 核シェルターの種類と現実

[fa icon="calendar"] 2022/03/18 11:00:00 / by 高荷 智也

高荷 智也


シェルター  

 
 前回のコラムでは「核爆発」「核兵器」に関する基礎知識についてご紹介をいたしましたが、今回は「核災害」に対するひとつの打ち手となる、核シェルターに関するお話をいたします。

 

■2種類ある核シェルター

 「核シェルター」と聞いてどのようなイメージを持たれるでしょうか。地下深くに作られた秘密基地、大富豪や政府の要人だけが入れる選ばれし者の楽園、人類滅亡まであと1年の状況で飛び立った宇宙戦艦の帰還を待つ方々が息を潜める地下都市。どれも正解ですが、実はもう1種類の核シェルターがあります。それは「高気密な部屋」です。

 核シェルターの目的は、核爆発などから人体を守り、生活を維持することです。核爆発が生じた際の影響は前回のコラムでご紹介した通り、「①超高温」、「②爆風」、「③放射線」、「④死の灰(放射性降下物)」ですが、これら全てまたは一部の影響に耐えられる性能を持った施設が核シェルターということになります。

 核爆発による「超高温・爆風・初期放射線」を回避するためには、前述の様な「地下シェルター」を必須としますが、広域を汚染する「死の灰」の影響のみを回避するためには、そこまで頑丈な部屋は必要なく、死の灰を建物や部屋の中に入れない「高気密」環境と「空気ろ過フィルター」があれば対応することができる場合もあります。

 そのため核シェルターは、核爆発の直接影響を避けるための「頑丈な施設」というものと、死の灰(放射性降下物)を防ぐために作られた「密閉空間」という種類のものが存在します。後者のシェルターは、気密性の高い部屋と空気ろ過フィルターを用意すれば作成することができるため、爆心地になりそうな地域以外にお住まいの場合には、比較的安価(といっても安くはありませんが)に調達ができます。

■核シェルターの弱点について
 
 核シェルターは万能ではありません。例えば地下に埋め込まれたシェルターであっても、核爆発の直撃を受けた場合や、想定よりも高威力の兵器を打ち込まれた場合などは、破壊されてしまう可能性があります。また、そもそも、避難が間に合わずにシェルターへ入れない可能性もあります。
 「核シェルターがあるから核戦争も怖くない」と言うことにはならず、運良く核シェルターに入ることができ、かつ想定の範囲内で爆発が生じた場合にのみ役立つものになります。もちろん、ないよりはあった方が生存確率を上げられることは言うまでもありません。

 核シェルターを最大限に活用するならば、核爆発が生じる前に中へ避難するための準備を整えておく必要があります。核兵器の飛来情報は、「弾道ミサイルによる攻撃情報」として、「J-アラート」経由で通知されることになります。スマホなどで受信できる情報を必ずキャッチし、かつ最短時間で移動するための準備が不可欠となります。

■核シェルターがない場合の現実的な対応

 一方で、核シェルターを個人が保有することは、現実的には難しいのが現状です。この場合は既存の設備や自宅を活用することで、核災害から身を守る必要があります。
まず、核兵器の直撃による「高温・爆風・放射線」から身を守る手段は…、残念ながらありません。直上で核爆発が生じた場合は、よほど大深度の地下でなければ影響を回避することは難しいのが現状です。
 
 もちろん、だからといって諦めるのではなく、少しでも生存率を上げるための作法はあります。スマホなどで「J-アラート」を受信した瞬間、地下鉄・地下街・地下駐車場などの地下空間や、少しでも頑丈な建物の窓がない部屋や廊下でうずくまる、という方法をとることになります。
 核爆発の直撃を回避できた場合は、死の灰(放射性降下物)の影響を避ける必要があります。自宅などにいた場合は、雨戸・シャッター・窓を全て閉め、換気扇や外気交換型の空調を止め、室内に閉じこもることになります。日頃から災害対策として備蓄品などを準備してあると役立ちます。
 
 屋外で核爆発を遠方に目撃した場合は(近距離の場合は即死してしまうため)、死の灰の影響を受ける前に避難をする必要があります。死の灰は風に乗って拡散されますので、原則としては爆心地の「風上」へ移動します。これは原子力発電所が事故・攻撃を受けた場合も同じです。
 
 死の灰が呼吸や飲食で体の中に入ると、ゼロ距離で放射線の影響を受けることになります。これを「体内被曝」と呼び、絶対に避けたい状況です。そのため、できるだけ遠方に逃げる、間に合わない場合は屋内に退避して閉じこもる、と言うような対応が必要になります。

■終わりに

 前後編2回にわたり「核」のお話をして参りました。当コラム執筆時(2022/03/10)において、核兵器の使用や原子力発電所への攻撃、絶対に生じて欲しくないと願いますが、ロシア・ウクライナ情勢がどのように変化するか分かりません。
 
 また核爆発への武力攻撃が生じた際の、絶対的な「防災対策」はありません。核戦争は、家庭の防災ではどうにもならない、生じたら最後の人災です。戦争に反対する声、核兵器を根絶していく声、こうしたものが「核防災」として必要なのだろうと思います。

 

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