Bitis ブログ

後編:「首都直下地震の被害想定」見直し資料を活用する

[fa icon="calendar"] 2022/06/21 11:00:00 / by 高荷 智也

高荷 智也


地震想定  


 コラム前編に引き続き「首都直下地震等による東京の被害想定」資料を、東京および東京以外の地域においても
役立たせるため、見所および資料の特徴について解説をいたします。


■「身の回りで起こり得る災害シナリオと被害の様相」

 東京都による首都直下地震被害想定見直し、特徴のひとつが「被害様相」について細かく記載されていることです。例えば建物に関する被害では、最大「194,431棟」に被害が生じると、従来の資料と同じく数字による想定がされている一方で、「震度6弱以上の揺れにより、老朽化や耐震性の低い木造建物やビル・マンションの倒壊、中間階の圧壊が発生する。」など、具体的な様相が記されています。

 この被害様相は、いわゆる総花的な書き方だけでなく、例えば「博物館・美術館、個人宅等で保管されている絵画・彫刻・古文書等の文化財が、揺れによる建物の倒壊や、落下・転倒等により、失われる可能性がある。」など、状況別に細かな描写がされている項目も多くあります。

 また、ライフラインに関しては、「地震発生直後・1日後・3日後・1週間後・1ヶ月後」と、時系列に沿って何がどう変化していくのかが、「交通・電気・通信・上下水道・ガス・燃料供給・物流」などの種類ごとに記載されており、家庭や企業の防災の前提となるようなイメージを得ることができます。

■直近の情勢変化を受けて追加・強化された項目

 前回の被害想定見直しから10年が経過したことで、社会的にも様々な変化が生じています。今回の見直しでは、社会の変化により従来よりもリスクが高まった項目についても言及されています。例えばこの10年間で、数が1.4倍に増加した「タワーマンション」に対する大地震の影響や、大地震後の被災生活で命を落とす可能性のある「震災関連死」に関する注意喚起は、その特徴と言えます。

 たとえば、地域別のリスクシナリオという形で、「繁華街・ターミナル駅・超高層オフィスビル・木造住宅密集地域・江東デルタ地帯(ゼロメートル地帯)・山間部・島嶼部」などの被害様相がそれぞれまとめられていますが、この項目のひとつとして1ページがタワマンの被害想定に割かれています。これら地域別の被害様相は、東京に限られる話ではないため、自宅や職場がこうした地域に該当する場合には参考となる記述です。
 
 タワーマンションに対する注意の具体例としては、「高層住宅の中高層階では、停電によるエレベーターの停止などにより、地上との往復が困難となるため、飲食料や携帯トイレなどの家庭内備蓄物資が枯渇した段階で、多数の避難者が発生するおそれがあるが、避難所での受入れは極めて困難になる可能性がある。」など、行政にしては突っ込んだ想定なども記載されています。

 また震災関連死については原因が多岐にわたるため、専用の項目を設けるだけでなく、例えば「停電によるエレベータ-停止の影響で、要介護者・賞が視野・乳幼児・妊婦など、階段での移動が困難な人は、中高層階に取り残されることで最悪の場合震災関連死にいたる可能性がある」とか、「高齢化が進んでいる地域では、災害時の地域ミュニティ運営で過労して体調を崩し、震災関連死に到る可能性がある」など、シチュエーションごとに注意が促されています。

 いずれも、近年の災害で特に注意が必要な項目とされていますので、自分自身の防災対策を行う際の参考資料として役立ちます。

■「概要資料」の「身の回りで起こりえる災害シナリオと被害の様相」をチェック!

 さて、今回ご紹介した要素は資料全体のごく一部の要素です。何しろ被害想定報告書、本編は全475ページもあり、生き抜きに読める代物ではございません。もし本編を読みたいという場合は、274~326Pに渡って掲載されている、「第5章 想定される被害(定性的な被害の様相)」の箇所が参考になります。

 また「ざっくり」ないようは、「概要資料」にまとまっております。特に10~14Pにタイムライン形式で掲載されている被害の様相が一番分かりやすいですので、ぜひこちらをご覧ください。

 

 

■■「事業継続計画を理解する3つのポイント」ご紹介■■■■■■■


「BCPってなに?」となるケースはまだ存在します。
具体的にBCPとはどのようなものか?
3つのポイントを使ってご説明いたします。

↓ダウンロードはこちらから
BCPとはなんだろう?「事業継続を理解する3つのポイント」

■■サイネージブログ■■■■■■■■■■■■■■■■

デジタルサイネージを防災ツールの1つとして利用しませんか?
PICLES(ピクルス)を使って、従業員への防災意識を向上させる
ことも可能です。

デジタルサイネージ:初動対応のポイントとデジタルサイネージの防災活用

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

Topics: BCP情報

あわせて読みたい

高荷 智也

Written by 高荷 智也