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BCPの前提!企業の防災対策 第7話「3日分の防災備蓄」

[fa icon="calendar"] 2018/04/10 12:00:00 / by 高荷 智也

高荷 智也


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 BCPの前提として行う「従業員の命を守る防災対策」、前回取り上げた「帰宅困難者対策」に必要な防災備蓄について紹介します。

従業員を帰宅させないための防災備蓄

 都市部にオフィスを構える企業は、大地震などの大規模災害が発生した際、従業員を徒歩帰宅させないための備蓄品を準備する必要があります。災害直後の徒歩帰宅で命を落とさないために、また徒歩帰宅者が道路をふさぐことで救助活動を妨害しないために、災害発生から72時間は社内にとどめることが必要になります。

 

最重要なトイレの準備

 最も重要な備蓄品は、水でも食料でもなく「非常用トイレ」です。丸1日飲まず食わずになっても直ちに健康を損なうことはありませんが、丸1日トイレを使わないということはあり得ません。また社内のトイレが使用できない場合、従業員はどんな手段を講じてでもトイレを求めて屋外へ出ることになり、これでは帰宅をさせないという目的を達することができません。

 「1名あたり15回分×3日間」を最低量として、凝固剤と袋がセットになっているタイプの非常用トイレを、従業員+10%(予備・避難者用)の分準備することを検討してください。便器そのものは建物内にある個室を使い、排泄物の処理のみ非常用トイレを用いるようにします。屋外の保管場所を確保できない場合は、臭いについて対策された商品を選ぶと良いでしょう。

 またトイレットペーパーについては、防災専用のものを備蓄するのではなく、普段から消費する紙の購入量を増やしておき、在庫がなくなる前に補充するようにすればコストを抑えられます。トイレの管理が自社ではなくビルメンテナンス会社の場合は、防災対策の一環として平時の備蓄量を増やすことができないか、相談をしてみてください。

 災害発生時、非常用トイレを設置するまでに時間がかかりそうな場合は、数回分の携帯トイレをあらかじめ従業員に配布しておき(非常用持出袋に入れて配布しても良い)、トイレの準備ができるまでは、個別配布した携帯トイレを個室で使ってもらえる様にすると時間が稼げます。水の流れない状態のトイレを無理矢理使用されることだけは避けるように計画してください。

 

水と食料の一部は日常備蓄を取り入れる

 トイレを準備したら、次は水と食料の準備を行います。食料は3食分×3日分程度、水は11.5L3L×3日分程度を目安にします。飲料水だけであれば1.5L程度で足りますが、洗面や手洗いなどの水を確保する場合は3L程度を準備してください。全てを水にする必要は無く、お茶などを加えたり、ウェットティッシュで代替したりしても構いません。

 全ての水と食料を防災専用の備蓄品でまかなうと、コストが高額になります。そのため、災害対応の自動販売機を導入したり、来客用の水やお茶のペットボトルを普段から多めに購入するようにしたり、社内に置き菓子コーナを設置したりして、備蓄品の一部を普段から消費する「日常備蓄」に置き換えることができれば、備蓄・福利厚生・コストダウンを同時に行うことができます。

 また1日1食でよいので、温かい食事を提供することができると、災害時のメンタルヘルスケアや体調管理に効果を発揮します。水を注ぐタイプの発熱剤が同梱されている食事のセットを備蓄品に加えたり、カセットコンロとガスなどを準備してお湯だけでも提供できるようにすると、ラインナップが広がります。年1回試食会などを実施し、認知を高めるようにするとよいでしょう

 

就寝と衛生管理に必要な道具を準備する

 数日間会社へ寝泊まりさせる場合は、就寝や衛生管理のための準備も必要になります。ソフト面としては、フロアや会議室などを男女別で区切るなどの計画をしたり、更衣室となるエリアをあらかじめ定めておいたり、妊娠中の従業員や健康に問題があるメンバーのために、休憩室のソファやベッドを提供できるような準備をしたりしておきます。

 ハード面としては、まず就寝用のグッズとして従業員の数+10%を目安にした、圧縮毛布・エアクッション・紙の下着などを準備するとよいでしょう。予算や保管スペースが潤沢でない場合の優先順位としては、防寒対策にも活用できる毛布(またはこれに代わる物)から準備するようにしてください。

 宿泊時は集団生活となるため、感染症などの対策をこうじなければなりません。トイレや食事の前後で手指の洗浄をするためのウェットティッシュ、マスク、歯ブラシなどが準備できれば理想的です。個々人が使うアイテムについては、非常持出袋とあわせて事前配布をしておいてもよいでしょう。

 また夜間停電すると身動きが取れなくなるため、人数分のLEDライトと予備の電池を準備する必要があります。さらに防寒と安全対策を兼ねた軍手、様々な用途に使い回せるタオル(圧縮タオルは場所も取らずに備蓄しやすい)、ビニール袋なども準備しておけると役に立ちます

 

実際に宿泊訓練をすると課題が見える

 災害が発生してから、課題や備蓄品の不足に気づいても手遅れです。防災備蓄品を準備したら、電気・水道・トイレを使わずに、備蓄した道具のみを使い、防災訓練の一環として実際に宿泊体験をしてみるとよいでしょう。不足する道具、足りていない事前計画を洗い出し、備蓄品やマニュアルの更新を行うことができます。  

Topics: BCP情報

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Written by 高荷 智也