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高齢社会を豊かにするテクノロジーを求めて 第8話 多様化するコミュニティの中、その1「コミュニケーション・ロボット」の出番

[fa icon="calendar"] 2021/08/31 12:05:15 / by 伊福部達

伊福部達

 

第8話

 

 シリーズ「高齢社会を豊かにするテクノロジーを求めて」の第8回目です。今回は「コミュニケーション・ロボット」についてのお話です。

 

 

〇ケンカ仲裁ロボット

 JSTプロジェクトが本格的に始まる前に、高齢者施設にいる住人たちに向けて、会話ができるコミュニケーション・ロボットがいたら何を期待しますか、というアンケートをとったことがある。その結果、忘れた「服薬」や「スケジュール」の時間を代わりに憶えて教えてくれること、という答えが多かった。ところが意外にもその次が「ケンカを仲裁してくれるロボット」であった。65年以上も違った職場やコミュニティで生活していたのだから、同じ施設に入ってもそれぞれの価値観、考え方、感じ方も多様になってきている。そのため住人同士の意見が違った時にはお互いになかなか妥協しないので、ケンカになってしまうことが多いそうである。そこにロボットによる仲裁を期待するのであろうが、幾ら人工知能が進歩したからと言って、現時点ではケンカの仲裁は難しい。

 定年後は、住み慣れた地域コミュニティに戻って近所付き合いをすれば良いのではとよく言われる。しかし、数十年もどこかの組織に属して、そこに共通する目標に向けて、助け合って過ごしてきた仲間は一種の「同志」のような存在になる。そのため、違った世界で生きてきた隣人達に直ぐに同志になれと言われても簡単なことはない。当時、百花繚乱といえるほどに現れたコミュニケーション・ロボットに寄せる期待は大きかったが、高齢社会にどう活かしたら良いかを的確に答えることは難しかった。

 

第8話_図1図1 色々なコミュニケーション・ロボット

 

 今回は、まず、コミュニティはどのような進化の過程をたどって形成されてきたのかを振り返り、情報化により新たに生まれたコミュニティについて述べたい。次に、「ポケモンGO」を例にとって、高齢社会へ向けてスマートホン(スマホ)の一つの活かし方を考えたい。

 

〇コミュニティの進化と変遷

 第7話で述べたように、人類の起源になる旧人類の種はたくさんいたことが分かっており、異なる種の間で交配も盛んに行われていたと言われている。その中でも生き残った新人と呼ばれるホモ・サピエンス(以下、サピ)は群れを作って行動するのに長けていたそうである。サバンナに棲む生き物を獲物する時に、一人ではとても太刀打ちできないような獰猛な動物に対しては群れで攻撃した方が有利である。それも単なる集団ではなく、ボス・サピがいてその下に頭の良い参謀・サピがいて、敢然と戦う武士・サピがいて、それらが有機的に配属されていた方が効率的に動物を仕留めることができたはずである。一説によれば、旧人のネアンデルタール人は脳や体は大きく、戦うための色々な道具も作っていたそうであるが、集団で行動するのはホモ・サピエンスの方が優れていたことから、種の保存競争に負けたという。

 

第8話_図2
図2 多様になったコミュニティの形態 (a), (b), (c)

 

 単に、集団によって戦う組織が獲物をとるのに有利に働いただけではない。集団が飢えないように捕獲した食料をボス・サピがコミュニティ内の仲間に分配したり、新しい食料を求めて集団でどこまでも移動したりしたことが種の保存に有利に働いたといえる。目的を共有する一種のコミュニティ形成はホモ・サピエンスにとって自然淘汰の世界で生き残るための不可欠なシステムであり、現代人もその仕組みが遺伝子の中に組み込まれているはずである。ヒトだけでなく、過酷な自然の中でも現存してきた植物や動物は、集団で組織として棲息・行動しながら環境に適応していったことで生き残ったのであろう。

 

〇尊敬されていた「長老」

 コミュニティ自体は、その周辺で捕獲できる食料の種類によって、またそこに住む気候や風土によって、組織の形態や戦略も変わっていった。そして長い年月を経てコミュニティ内の人たちは独自の価値観や文化を持つようになり、特有の文明を築いていった。その結果、多様な文化や文明を持つ民族や社会が数多く生まれていって現在に引き継がれている。その時代は、図2(a)に示したように、働く場と生活するコミュニティはほぼ同じ場所にあったと言える。

 昔は、コミュニティの中で知識や経験が豊富で高度なスキルも持っていた長老が尊敬され、長老も若い人を育てるのに努力を惜しまなかったのであろう。ところが産業の多様化や情報化の急速な広がりによりコミュニティの形態も変わってきたことから、長老の役割も様変わりしてきた。次回は、新しい情報化コミュニティを高齢社会に活かす方法について一例を挙げて考えたい。

 

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Topics: コラム

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