部下のモチベーションは上司が上げるものではありません。しかし、上司の行動によって、部下の仕事に対する動機付けなどが変わる可能性もあります。部下のやる気が出ないときに上司ができることをまとめたので、ぜひ参考にしてください。
部下のモチベーションは上司が上げるものではない
モチベーションとは、動機づけのことです。「仕事に対するモチベーションが低い」とは、なぜ仕事をするのか理由がはっきりとせず、やる気が起こらない状態を示します。反対に「仕事に対するモチベーションが高い」とは、仕事をする理由を明確に理解したやる気がある状態です。
部下のモチベーションが低く、どうすればよいのかと悩んでいる方も多いでしょう。しかし、部下のモチベーションは上司が上げるものではありません。部下のモチベーションは、部下自身で上げる必要があります。
「モチベーションは自分で上げる」ことを徹底する
モチベーションを上げるのは、本人しかできません。例えば上司が「この仕事が終わったらみんなを食事に連れて行ってあげるから、早く仕事を終わらせよう!」と言ったとしましょう。しかし、部下が食事会を楽しみに思わなければ、仕事を頑張るモチベーションにはなりません。
モチベーションが上がるかどうかは、食事会を楽しみに思うかどうか、つまり、本人次第といえます。モチベーションは自分で上げるものだという考え方を徹底しておくことで、部下も「モチベーションが上がらないのは上司のせい」という他人任せの考え方から脱却できるでしょう。
そもそもモチベーションがなくても仕事はできる
そもそも、モチベーションが上がらないと仕事ができないという考え方は正しいとはいえません。先程の例であれば、「仕事は定時までに終わらせるものだ」という認識が全体に行き渡っていたら、上司が食事に連れて行ってあげると言わなくても、部下は仕事に対して全力で取り組みます。
つまり、モチベーションがあるかどうかではなく、仕事に対する姿勢や取り組み方が大切といえます。モチベーションがなくても、「仕事は全力でするのが当然」と考え、「定時までにその日のするべき仕事を終わらせる」ことが当然と理解していれば、仕事はできるものなのです。
部下にやる気を起こさせる上司の5つの言動
モチベーションを上げるのは部下自身がすべきことなので、上司は関わる必要はありません。しかし、上司の言動によって部下にやる気が起こることがあるのも事実です。部下のやる気を引き出す5つの言動を紹介するので、ぜひ実践してみましょう。
- 仕事の目標を明確にする
- 部下の成果を公正に評価する
- 適切なタイミングと場所で叱る
- 未来を共有する
- 失敗を恐れない環境を構築する
1.仕事の目標を明確にする
何のための仕事か分かっていないと、仕事に対して全力で取り組むことができません。例えば「明後日クライアントに提示するプレゼン作成のために、この資料から〇年の化学繊維に関するデータを集めておいて」と言うのと、「この資料から〇年の化学繊維に関するデータを集めておいて」と言うのでは、部下の目的意識は変わります。
期限が分かっているので、できるだけ急ごうという気持ちになり、自分も関わっているプロジェクトであれば、さらに集中力は高まるでしょう。部下に仕事を指示するときは、目的や期限を明確にすることが大切です。
2.部下の成果を公正に評価する
頑張ったときは頑張ったと評価される環境を作ることで、部下にやる気を起こさせます。例えば部下がいつも以上に見やすい資料を作成したなら、しっかりと褒めて、評価しましょう。
また、評価が公正であることも大切です。同じようにこつこつと頑張っているのに、ある部下は褒めて、別の部下にはコメントなしではやる気を引き出せません。上司は部下の仕事の内容や取り組み方を丁寧にチェックして、公正に評価しましょう。
3.適切なタイミングと場所で叱る
指示通りに仕事ができていないときなどは、部下を叱ることも大切です。しかし、叱るときはタイミングに注意しましょう。部下が失敗や間違いをしてからあまりにも時間が経過していると、何の注意をしているのか分からなくなってしまいます。
また、叱る場所にも注意が必要です。他の人がいる前で叱ると、部下は「なるほど。そこが間違っていたのか」と理解するよりも先に恥ずかしさを感じてしまいます。そのため、次もまた同じ間違いをする可能性があります。
叱るのは部下の間違いや失敗を減らすためです。効果的に叱るためにも、タイミングと場所に注意しましょう。
4.未来を共有する
仕事を通してどのような変化を得たいのか、部署全体で共有しておく必要があります。未来を共有することで、部下が自主的に動き、積極的に仕事に関わるようになります。
また、一人ひとりが自分の仕事を行うだけでなく、協力して働くようになります。朝礼のときなど、仕事の目的だけでなく未来についても語るようにしましょう。
5.失敗を恐れない環境を構築する
失敗をしたという結果だけを見て叱るのは良い結果には繋がりません。なぜ失敗をしたのか理由を突き止め、次は失敗をしないために何ができるのか、部下と一緒に考えていきます。
また、新しいことにチャレンジして失敗した場合は、失敗したことではなくチャレンジしたことに重きをおいて評価しましょう。失敗を恐れない環境を構築することで、部下が自主的に働けるようになります。
部下の「やる気スイッチ」を理解する3つの方法
上司は、部下がやる気を出しやすい環境を用意する必要があるでしょう。しかし、どんなときに「頑張ろう」と思うのかは、部下一人ひとりによって異なります。次の3つの方法を実践することで、部下のどこに「やる気スイッチ」があるのかを理解しておきましょう。
- 成果と報酬を明らかにする
- 部下の関心事を理解する
- 適切にコミュニケーションを取る
1.成果と報酬を明らかにする
成果が見えないと、やる気を持って仕事に取り組むことは難しいでしょう。特に、資料を作成する、データを打ち込むなどの反復作業は、成果が見えないと意欲的に取り組むことができません。
また、成果と報酬に因果関係があることも大切です。例えば作業をいつもよりも多くこなしたときは、インセンティブが支払われると決めておくこともできるでしょう。そのほかにも、優秀者の名前を掲示する、表彰するなどのように「称賛」の形で報酬を支払うこともできます。
作業が遅く、なかなか称賛されにくい部下もいるかもしれません。職場の公正さを保つためにも、仕事の量や販売数などの数字だけで評価するのではなく、「正確さ」や「丁寧さ」などの数値化できない指標でも評価するようにしましょう。極力すべての部下が何らかの評価を得られるようにすることで、部下の「認められたい」という気持ちを刺激します。
2.部下の関心事を理解する
部下が何に関心を持っているかを理解することも、やる気スイッチを理解するために不可欠なポイントです。例えば仕事量に対してインセンティブを支払ったことで、翌月の仕事量がさらに増えているなら、報酬が部下の関心事のひとつであると推測できるでしょう。
部下の関心事に沿って仕事を割り振ることで、より成果を上げることができます。仕事の質を追求している部下であれば、リモートワークなどにも対応して、一人で仕事に専念できる環境を用意することができるかもしれません。また、人と関わることに興味がある部下であれば、プロジェクトチームなどに参加させ、能力を発揮しやすい環境を提供できるでしょう。
3.適切にコミュニケーションを取る
部下が何に関心を持っているか、何を重視しているかを知るためにも、適切にコミュニケーションを取ることが大切です。部下とのコミュニケーションを通して、部下のどこにやる気スイッチがあるのか理解しやすくなるでしょう。
コミュニケーションは適度に取る必要があります。コミュニケーションが多すぎると仕事を邪魔することになるだけでなく、コミュニケーションを苦手とする部下にとっては苦痛な時間が長続きすることにもなるでしょう。
とはいえ、あまりにもコミュニケーションが少ないのもおすすめできません。雑談は毎日しつつ、部下が必要性を感じているときや部下に伝えたいことがあるときには、1対1の密なコミュニケーションを取るようにしましょう。
部下のモチベーションを下げる4つの状況
上司の言動や職場の雰囲気によっては、部下が元々持っていたモチベーションを失い、やる気をなくしてしまうことがあります。モチベーションを下げてしまいがちな状況としては、次の4つが挙げられます。
- 日々の仕事が忙しすぎる
- 職場で親身に相談できる人がいない
- リモートワークが続いてコミュニケーション不足
- 仕事が適切に評価されない
それぞれについて詳しく解説します。
1.日々の仕事が忙しすぎる
どんなに仕事が好きな人であっても、仕事が多すぎて忙しすぎるときは、やる気を失い、モチベーションを持って仕事に取り組めなくなってしまいます。作業をとりあえず部下に割り振るのではなく、部下が現在取り組んでいる仕事の数と残っている仕事の量をチェックしてから、無理なくできる量だけを指示するようにしましょう。
また、毎日の仕事が忙しすぎると、部下の気持ちに余裕がなくなり、職場全体がピリピリした雰囲気になってしまいます。職場は常に和やかで、前向きな気持ちを持てる空気感であることが望ましいので、仕事量を調整することで居心地のよい環境を作っていきましょう。
2.職場で親身に相談できる人がいない
部下の人間関係も観察しておくほうがよいでしょう。親身に相談できる人がいれば、仕事に対しての悩みなども話せるので、ある程度のモチベーションを持って業務に当たることができます。しかし、親身に話せる人がいない場合は、仕事にトラブルが生じたときや、やる気を持って取り組めなくなったときにサポートする人がいないので、不調が長引くかもしれません。
親しく話せそうな社員を選び、必要に応じてサポートしてくれるように依頼することもできるでしょう。また、上司自身がこまめに声をかけ、部下に困っていることがないか尋ねることができます。
頻繁に声をかけていると、部下からも困ったときに気軽に話してくれるようになるかもしれません。上司がどの部下にも親しく声をかけることでも、お互いが助け合って仕事ができる環境を作っていきましょう。
3.リモートワークが続いてコミュニケーション不足
リモートワークを導入することで、仕事の効率が上がったと感じる部下もいれば、仕事に対するモチベーションを保ちにくく、作業効率が下がったと感じる部下もいます。作業効率が下がった場合は、コミュニケーション不足の可能性があります。メールやチャットなどを使ってこまめにコミュニケーションを取り、部下がやる気を持って仕事に取り組めるようにサポートしていきましょう。
とはいえ、1日に何度もチャットで連絡を入れるのは、部下の仕事の邪魔になる恐れがあります。朝礼ミーティングの際に部署全体にやる気の出る明るい声掛けをするのに加え、部下一人ひとりに対しては1日に1回程度チャットで「何かあったらすぐに連絡をして欲しい」と伝えるようにしましょう。
4.仕事が適切に評価されない
上司が仕事を適切に評価しないと、部下は「どんなに頑張っても評価してもらえない」と感じ、やる気を持って仕事に取り組めなくなってしまいます。出社している場合はもちろんのこと、リモートワークをしているときも、部下の仕事は丁寧にチェックし、正しく評価するようにしましょう。また、良い点を的確に見つけて、褒めることも大切です。
定期的な面談でモチベーション管理を行おう
部下がやる気を持って仕事に取り組むためにも、上司は面談を実施することができます。面談を行うことで部下の気持ちを理解し、やる気スイッチがどこにあるのか見つけやすくなるでしょう。
また、面談は定期的に行うことが必要です。何かあったときだけに面談を行う習慣にすると、部下は「面談をする」というだけで緊張してしまい、思ったことが話せなくなってしまうかもしれません。
最初に面談の目的を説明する
定期的に面談を行う場合でも、それぞれの面談は目的を持って行うべきです。そして、その目的を面談の最初の時点で部下に伝えましょう。
「今日は次回のプロジェクトに関して話します。どのようなポジションでの参加を希望していますか?」のように始めることで、部下は緊張せずに話せるようになります。また、目的を決めて面談を実施することで、雑談にならず、意味のある時間になるというメリットもあるでしょう。
結論は不要!部下に安心感を与えることが大切
面談に結論は不要です。面談は部下が考えていることを理解するための場であり、会議ではありません。
また、部下が安心感を持って話せるように、部下の発言に対して結論づけないことも大切です。部下の意見はすべてノートに書き留め、それが良いか悪いか、どう考えるべきかといった批評をしないようにしましょう。面談はあくまでも部下を理解するための場所であり、上司の意見を述べる時間ではありません。
まとめ
部下のモチベーションは部下自身が上げる必要があります。しかし、部下がやる気を持って仕事に取り組めるような環境を用意することは上司の仕事です。仕事の目的を明確に示し、部下の仕事に対して公正に評価して、部下が頑張ろうと思える職場環境を構築していきましょう。また、定期的に面談を実施し、部下の思いを理解することも大切です。
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