新入社員の教育は、会社の即戦力となる人材を育てるために必要です。適切な教育を行うことで必要なスキルが身につき、高いパフォーマンスを発揮できます。
本記事では新入社員教育の目的やポイント、新入社員教育でよく行われる研修などについて詳しく紹介します。
【目次】
新入社員教育の目的
新入社員教育の目的は、会社の戦力となる人材に育てるためです。人材不足と若手社員の離職に悩む企業は多く、新入社員を少しでも早く会社の業務に慣れさせて即戦力となる人材に育て上げることが急務となっています。
また、会社の業務に慣れて早期離職を防ぐことも目的のひとつです。新入社員教育の目的について、さらに詳しく見てみましょう。
企業に貢献する人材に育てる
新入社員教育は、新入社員が業務を身につけ、企業に貢献できる人材になってもらうことが目的です。
近年は少子高齢化で人材不足が続いており、新入社員には少しでも早く会社の戦力となってもらうことが期待されています。そのためには適切な新入社員教育で、効果的に人材育成を行わなければなりません。
新入社員教育では仕事に役立つ技術を教えながら、その新入社員に向いている業務を見極めることが必要です。
早期離職を防ぐ
新入社員教育のもうひとつの目的は、早期離職を防ぐことです。入社しても仕事がわからない状態が続くとモチベーションがなくなり、早期離職につながりやすくなります。
新入社員教育で早く仕事に慣れて自分のやるべきことを自覚することにより、仕事に対する心構えや責任を持つことができます。仕事への意欲が湧き、積極的に取り組めるようになるでしょう。
新入社員教育のポイント
新入社員教育の目的を達成するためには、押さえるべきポイントがあります。まず、ゴールを設定し、それに向けた具体的な計画を立てることが必要です。計画の内容も重要であり、学んだことをいつも見返せるよう、マニュアルの作成も欠かせません。
ここでは、新入社員教育を成功させる3つのポイントについて紹介します。
1.ゴールを設定する
新入社員教育の第一のポイントは、ゴールの設定です。ゴールの設定により逆算してスケジュールを組めるようになり、新入社員にとっても目指すべきものがあることでなぜその学びが必要かが腑に落ちやすくなります。設定には新入社員の意向を汲み取れば、より意欲的に取り組むことができるでしょう。
ゴールはできるだけ具体的に設定します。数値化すればゴールまでの目安がわかり、進行具合が把握できてモチベーションも高まるでしょう。
達成可能なゴールにすることも大切です。新入社員の実力以上のものを求めると逆にやる気を失い、達成できなければ自信をなくします。
また、ゴールは複数ではなく、ひとつに絞って集中できるようにするとよいでしょう。
2.育成計画を立てる
ゴールが明確になったら、到達するための育成計画を作ります。必ずゴールに到達できるよう、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
計画は順調に進むとは限らず、別の用事が入って思うように進まないかもしれません。そのような事態を想定するという意味でも、余裕のあるスケジューリングが必要です。
大きなゴールの前に、中間地点で達成度がわかる小さいゴールをいくつか設ければ、成長の度合いがわかってモチベーションを保つことができます。
3.マニュアルを作る
仕事を覚えるには繰り返しの学びが必要です。新入社員教育で学んだ内容を繰り返し確認できるよう、マニュアルを作成しておきましょう。
マニュアルはテキストばかりだとわかりづらく、図解や画像、動画などを活用したものを作ることがポイントです。初心者でも見てすぐに理解できるようなわかりやすいマニュアルを作成し、いつでも確認できる状態にしておきましょう。
新入社員教育で行われる研修
新入社員教育の研修で代表的なものが、OFF-JTとOJTです。OFF-JTは主に座学でビジネスの基礎など原則をインプットする研修方法です。OFF-JTで学んだ知識は、OJTとして実際の業務を通じアウトプットします。
新入社員教育の研修は、ほかにロールプレイングやグループワークなど、さまざまな方法があります。それぞれの内容を見てみましょう。
OFF-JT
OFF-JTとは「Off-the-Job Training」の略で、日常の業務から離れ、時間や場所を取って行う教育のことです。外部の講師を招いて開催する集合研修や外部セミナーへの参加、eラーニングなどが該当します。
OFF-JTは基礎的な知識を体系的に学んで土台を作る方法で、社会に出て間もない新入社員の教育に適した方法です。
OFF-JTは教育内容の標準化や品質の確保がしやすく、全員に同じ教育を施せるというメリットがあります。
OJT
OJTは「On-The-Job Training」の略で、Off-JTで学んだことを職場で実践しながら業務を学ぶ方法です。主に先輩社員が指導にあたり、一人で問題なく業務が行えることを目標に行われます。
OJTは実践的なスキルが身につくことや、新入社員一人ひとりのレベルに応じた教育ができるのがメリットです。また、周囲の先輩社員と交流しながら学ぶことができ、職場に早く慣れることができるのも優れたポイントといえるでしょう。
OJTだけでは体系的に学べないため、OFF-JTと組み合わせて実施されるのが一般的です。
ロールプレイング
ロールプレイングとはrole「役割」とplay「演じる」を組み合わせた言葉で、疑似体験をする研修です。具体的な場面を設定し、それぞれ割り当てられた役割を体験します。
実際に役割を演じながら課題や傾向を把握し、改善に結びつけるスキルが身につくのがメリットです。 疑似体験により学んだ内容は実際の業務に活かしやすく、グループワークと組み合わせることでコミュニケーション力を養うこともできます。
ケーススタディ
ケーススタディとは、現実に起こった事例を分析、検討し、問題解決を行う研修です。分析力や問題を解決するスキル、洞察力、論理的思考などを養えます。
実際の事例やよくあるケースを使うことでイメージしやすく、業種に特化した内容を学べるのが特徴です。また、事例に即した正しい対応ができるようになります。リスク回避や結論を出すまでの時間を短縮する、困難な事態に対応できる能力なども身につけることができる研修です。
フォローアップ研修
フォローアップ研修とは、研修後に振り返りを行い、課題や改善すべき点を確認するための研修です。研修後に業務につき、どの程度学んだ内容を活かせているかを確認できます。
フォローアップ研修のタイミングは特に決まっていませんが、3ヵ月後、6ヵ月後などを設定して行うと、研修の成果を確認しやすいでしょう。
3ヵ月後のフォローアップ研修は、主に新入社員研修の復習として行う研修です。どの程度知識が定着しているかを確認し、仕事の進め方を再確認するという目的があります。
6ヵ月後はだいぶ仕事に慣れてきた時期で、解決すべき課題の検討などを行います。仕事への緊張感が緩んできやすい時期でもあるため、モチベーションを高める効果もあるでしょう。
1年後にフォローアップ研修を行う場合もあります。新入社員だった社員が後輩を迎える時期であり、学んだことを伝える立場になる前に、あらためて培ったスキルを確認するという意味で有効な機会です。
新入社員教育は疲れる?
「新入社員教育は疲れる」といわれることもあります。OJTの現場で自分の業務を行うかたわら新入社員に仕事を教えることは、いろいろと気を遣って疲労する場面もあるでしょう。なかなか仕事を覚えてもらえず、イライラすることがあるかもしれません。
しかし、新入社員教育自体が疲れるというよりは、行う側にも何らかの問題はありそうです。
教える技術が不足していてうまく教育できない、初期教育が十分でなく教育の効果が出ないといったこともあるでしょう。
新入社員教育が疲れてしまう原因について、紹介します。
教える技術が不足している
新入社員教育が疲れるという声が上がりやすいのは、主にOJTの現場です。教育をしていて疲れてしまうのは、教える側の技術が不足しているのかもしれません。OJTで新入社員を担当する先輩社員は教えるスキルを持つとは限らず、教え方がよくないために覚えられないという可能性もあります。
また、会社勤めが初めての新入社員は、業務に不慣れでなかなか覚えられないのは仕方のないことです。育成にはある程度の時間がかかり、成長のスピードには個人差もあります。
失敗をしながら成長するという視点を持たないと、疲労感ばかり感じてしまうでしょう。
初期教育が十分行われていない
新入社員教育は初めにOFF-JTを行って初期教育を行い、身につけた知識をOJTの現場で実践するという順番で行われるのが一般的です。しかし、OFF-JTの段階で十分な教育が行われていないと、教える側の負担になります。
OFF-JTで行う初期教育は業務の知識だけでなく、教わる側の姿勢も学べるものでなければなりません。教わったことはメモにとり、疑問点は必ず質問する、まとめたものは先輩社員に確認してもらうなど、教わる側の姿勢がしっかりしていれば教える側の負担はだいぶ軽くなるでしょう。
新入社員教育で注意したいこと
新入社員教育では、いくつか注意したい点があります。ただ仕事内容を教えるだけでなく、企業理念やビジョンを浸透させ、仕事をする目的や意味を伝えることも大切です。
また、できない部分ばかり指摘するのは避けましょう。仕事への意欲をなくしてしまうかもしれません。
ここでは、新入社員教育で注意したいことを2点紹介します。
1.仕事の目的や意味を伝えること
新入社員に業務内容だけを教えるのではなく、仕事をする目的や意味を正確に伝えることが必要です。業務全体に共通する目的や意味がわからないと、知識を体系的につなぐことができません。何のために働くのかがわからなくなり、モチベーションを高めることができなくなります。
また、研修で特に重視すべきことは、企業理念の浸透です。企業理念とは会社の根幹となる考え方や価値観のことで、社員が取るべき行動の指針となります。業務で何らかのトラブルや問題が起こったときに、意思決定の基準となるものです。
企業理念は1回の研修で浸透させることは難しいため、新入社員研修以降に行われる研修でも、定期的に盛り込んでいくとよいでしょう。
さらに、学生から社会人になった新入社員には意識改革の教育も大切です。会社の一員として与えられた仕事を行い、顧客や取引先と向き合いながら社会に貢献するという自覚を持つことが必要です。
2.できない部分ばかり指摘しないこと
仕事を始めたばかりは、できないことが多いのが当たり前です。できない部分ばかり指摘するのはやめましょう。自信をなくし、仕事への意欲もなくしてしまいます。
指摘するにしても、「こうすれば良くなる」というように、肯定的な伝え方をしましょう。ただでさえ仕事に慣れないうちは不安で、自信を持てないものです。できたことは積極的に褒めてあげれば、自信を取り戻してさらに学ぶ意欲を高められるでしょう。
まとめ
新入社員教育の目的は、少しでも早く仕事を覚えて会社に貢献できる人材にするためです。仕事へのモチベーションを高め、早期離職を防止するという目的もあります。研修の効果を高めるには、初めに明確なゴールを設定することが大切なポイントです。研修では企業理念の浸透に努めることも、忘れてはなりません。
新入社員教育を成功させて、優秀な人材を育てましょう。
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