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組織にいながら組織を超える存在になる。

[fa icon="calendar"] 2018/03/08 14:10:08 / by 高橋昌也

高橋昌也


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組織で働く個人

 こちらにブログを書かせていただくようになって6回目になります。これまでに「自己啓発の目的」「強みを活かした自分磨き」「自己啓発のための投資」などについて触れてきましたが、何れも組織の中で働く個人を前提としたものです。

 組織の中で働く個人は、かつてチャップリンの映画「モダンタイムス」では、日々繰り返される工場の仕事で歯車と化し、心を病んでしまう主人公として描かれたりしていました。組織に使われる工場労働者の悲哀の物語ですが、歯車のままではいつまで経っても個人が報われることはありませんね。

 

組織という道具 

 ところでドラッカー教授は、働くものにとって「組織は道具である」と言っています。組織で「歯車と化す」ように働くのとはずいぶん違います。産業革命後の大量生産の時代の労働者は、工場などで指示命令に従って働く人(マニュアルワーカー)が中心でした。しかし現在は、同じ仕事でも自らが考えて新しい価値を生み出して働く人(ナレッジワーカー)がその中心になっています。

 個人が組織を手段として捉え、自らを磨きながらその強みを活かし、最大限のパフォーマンスを発揮できる場として使うことを「道具」と表現しています。また、各個人がそのように動けるよう環境を整備し強みを引き出すのが、マネジメントである管理職の責務であると述べています

 

自分磨きの先輩

 組織人として私の最初の職場は百貨店の三越でした。そこには、私が師の一人として仰ぐ先輩Iさんがいました。組織をして、より大きな貢献ができるように常に自分を磨き、全体の成果と顧客の価値創造に尽くした人です。

 高校を卒業して直ぐ三越に就職し、日本橋本店の紳士服売り場を経て外商部で活躍し、40代初めに全店の社員の中で売上NO1になると退職までこれをキープし続けたレジェンドです。

 配属先の紳士服売り場で、一人の顧客もない中コツコツと努力を重ね、外商部へ異動した後も自ら縁を紡いだ担当のお客様のために尽くしてきた百貨店マンでした。外商部には、法人を担当する人と個人を担当する人がいましたが、Iさんは個人顧客の担当でした。

 三越には昔から、優良顧客に専任の販売員がつく「お帳場制度」があります。Iさんは、その「お帳場」のお客様に紳士服をはじめとした商品、旅行の手配、自宅の新改築、冠婚葬祭まで、顧客の人生に関わるありとあらゆることのお手伝いをしてきました。

 選りすぐりの担当顧客は、700家族、3,000人に上りました。その中には歴代の首相や皇族、政財界や宗教界のトップの方もいらっしゃいました。今でも電話の最初の一言で2,000人の顔と名前が分かるそうです。

 それだけのお客様の秘書役を務めることを決心してからは、毎日が自分磨きの時間だったと言います。お客様から教えていただくことも沢山あり、その学びを他のお客様のおもてなしに活かすことも忘れなかったそうです


自分の付加価値は

 Iさんは、ただモノを売っていればいいという商人(あきんど)の時代はとっくに終わり、今はその商品にいかに付加価値を付けて売るかにかかっていると言います。私もそのこと自体は、ビジネス書で読んだりセミナーで聞いたりしていたので、特に目新しいことだとは思いませんでした。

 でもただ知っているのと、できるのとでは全く違います。試行錯誤を重ねながら、商品を介して人と人を結びつけることを使命としたIさんの付加価値のつけ方は特別なものでした。

 例えば、Iさんには親子3代にわたってお付き合いしているお客様が沢山いました。結婚前の婚約指輪選びから始まって、お子さんが誕生した後のベビー服から入園、入学、幼稚園から大学、成人式から就職までのお世話。

 そのお子さんが結婚してお孫さんができ、同じようにベビー服、七五三、小学校入学だと、人生の節目節目の様々なお手伝いをして40年以上になるそうです。お子さんご夫妻が、地方からIさんを訪ねておいでになり、お孫さんの七五三のお買い物をします。その場にいないスポンサー役のおじいちゃま、おばあちゃまには何百万円ものお買い物になります。

 Iさんは、そんなお子様ご夫妻が、お孫さんと着物を選んで試着する様子を写真に収めアルバムにしてお渡しするのです。写真を目にしたときの、おじいちゃま、おばあちゃまの嬉しそうな顔が目に浮かびます。後に大きくなったお孫さんにも、よい記念になることでしょう

 

お客様の秘書役に

 私の入社当時の三越は、大型スーパー台頭の脅威に対して全店を挙げて売り上げ日本一奪還に取り組んでいました。しかし行き過ぎた販売計画は「三越事件」()を招き、三越から離れるお客様も大勢でました。多くの社員が三越を辞めましたが私もその一人でした。

 そのような中でも、Iさんはいつもどおりお客様に尽くしたのでした。お帳場の方々は、三越のことよりもIさん個人をとても心配してくださったといいます。組織という器ではなく個人としてのIさんを見ていてくれたことに、とても感謝したそうです。

  組織にありながら組織を超える存在になったIさんの話を聞いて、私は改めて「組織は道具である」という言葉を思います。三越にいなければお帳場のお客様と出会うこともなかったIさんです。その中でお客様の価値観に根差した秘書役に徹して、組織本体が揺らいでもビクともしない自分自身を作った人です。お客様にとっても余人に代えがたい存在なのです。でもこのようなことは、百貨店という業態だけに留まることなのでしょうか。

 次回も自分磨きをもう少し掘り下げていきたいと思います。

 

(註)強引な販売計画が多くの歪みを呼び、社会問題になった三越のスキャンダル

 

Topics: 自己啓発

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高橋昌也

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