6月18日に生じた「大阪府北部の地震」に続き、7月には西日本を中心とする全国的な大雨による「平成30年7月豪雨」災害が生じてしまいました。その後も記録的な高温による熱中症被害が多発するなど、改めて災害の多い国・多い時期であることを実感します。シリーズ「初動対応マニュアル」の2回目となる今回は、マニュアルを構成する項目リストの紹介をします。
1)緊急対応
初動対応マニュアルの冒頭は、緊急対応の項目を並べます。大地震や突発的な大規模水害など、物理的な破壊を伴う災害が発生した直後に使用します。作成のポイントは、「マニュアルを順になぞることで、人命保護・二次災害の防止に役立つ」ようにすることで、混乱に陥る非常時においてもすぐ使えるよう、分かりやすい内容にします。
大項目 |
小項目 |
マニュアル(雛形)の内容 |
目次 |
・マニュアルの内容を俯瞰できる項目を冒頭に定める ・ケース別の行動フローをまとめておいてもよい ・夜間、屋外、雨中などでも閲覧できるように工夫する |
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緊急対応 |
出勤規則 |
・就業時間外の発災時における出勤基準、就業規則 ・出社停止の連絡をする場合の連絡手段、連絡リスト |
救助活動 |
・救助用品の内容、保管場所 ・要救助者が生じやすい点検箇所のリスト |
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応急手当 |
・応急手当用品やAEDの内容、保管場所 ・応急手当の方法や参照できるマニュアル、参考書籍 |
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緊急搬送 |
・担架や搬送用具の内容、保管場所 ・大規模災害時の拠点病院の場所、地図、移動ルート |
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避難計画 |
・拠点周辺の地図(ハザードマップ)、避難場所、移動ルート ・避難時に各自が持ち出すグッズの内容、保管場所 |
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重要物持出 |
・避難時に持ち出すべき重要書類、物品のリスト ・搬出手続き、搬出手順 |
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二次災害防止 |
・消火器具、浸水防止道具などの内容、保管場所 ・各種用品の使い方やマニュアル |
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建物の安全確認 |
・建物からの一次避難基準、避難先、移動ルート ・建物の安全確認方法、保安/ビルメン会社との連絡方法 |
2)情報収集
緊急対応の次は、情報収集に関する項目です。緊急対応により目の前の危険を脱したら、さらに緊急対応を続けるにせよ、業務復旧を目指すにせよ、情報がなければ行動が取れません。情報を集める体制・環境を準備し、あらかじめ準備するテンプレートを用いて必要な情報を集めます。なお就業時間外に大規模な災害が発生した場合などは、緊急対応を飛ばし、遠隔による情報収集から着手する場合もあります。
大項目 |
小項目 |
マニュアル(雛形)の内容 |
情報収集 |
仮本部 |
正式な対策本部が立ち上がるまでの仮本部、情報収集がメイン ・設置基準、招集メンバー、連絡先リスト、連絡方法 ・設置場所(物理拠点 or オンライン拠点)、準備物品リスト |
通信確保 |
情報収集の手段と、連絡を取り合うための手段を確保 ・ネット端末、テレビ、ラジオの内容と保管場所、利用方法 ・衛星携帯電話、MCA無線、IP無線などの内容と保管場所、利用方法 ・目視による周辺調査手順、地図、必要な道具の内容と保管場所 |
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災害情報 |
以下のようなリストの雛形を準備し、災害そのものの状況を把握する。 ・災害情報(地震の震源、堤防の決壊地、二次災害の状況) ・ライフライン情報(電気・ガス・水道・通信) ・交通情報(鉄道・バス・高速道路・幹線道路・周辺道路) ・流通情報(周辺商店の状況・食料品や日用品の入手について) |
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安否確認 |
・安否確認システムの利用方法、もしくは連絡網 ・安否情報を書き込むためのリスト雛形 ※災害の規模が軽微であれば、発災後いきなりこの項目へジャンプする |
3)環境整備
就業時間中に災害が発生し、情報収集の結果社内のライフライン停止が確認された場合、この環境整備を行います。社内に留まることができるような状況を整備することを目的に、停止したライフラインの代替処置を行って行きます。この時は、トイレの確保や、夜間の場合はライトの配付など、特に優先度の高い項目から対応できるように準備しておきます。
大項目 |
小項目 |
マニュアル(雛形)の内容 |
環境整備 |
トイレ確保 |
トイレ使えない場合は最優先で対応をする。数回分の携帯トイレを水/食料と合わせて事前配布しておいてもよい。 ・非常用トイレの内容、保管場所 ・トイレの設置/封鎖計画、トイレの設置手順 |
備蓄品管理 |
・水/食料/就寝道具などの内容、保管場所 ・配付対象者、配付内容、配付手順 ※備蓄品管理はこのマニュアルではなく、保守運用マニュアルで行う |
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宿泊対応 |
・全従業員の住所、連絡先、帰宅可能性に関する資料 ・宿泊計画、フロア割り、宿泊者リストの雛形 ※大規模災害時は社内待機を原則とした計画を立てる |
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帰宅対応 |
・方面別の地図(ハザードマップ)、帰宅者リストの雛形 ・帰宅支援グッズの内容、保管場所、配付手順 |
4)意思決定
緊急対応による安全の確保、環境整備による最低限の業務環境の準備ができたら、情報収集結果に基づいた意思決定を行います。意思決定には社内外の被害状況が必要で、これを調べるためには「BCP本体」の作成とあわせて、中核事業と重要業務に必要な物品のリスト化が必要になります。そのため意思決定項目の作成については、他の項目と異なりBCP本体の作成と並行して作業をすることになります。
大項目 |
小項目 |
マニュアル(雛形)の内容 |
意思決定 |
対策本部 |
正式な対策本部設置の手順をまとめる ・設置基準、招集メンバー、連絡先リスト、連絡方法 ・設置場所(物理拠点 or オンライン拠点)、準備物品リスト ※情報収集の結果、仮本部で捌ける規模であればこれはスキップ |
社内状況 |
「BCP本体」でまとめた「重要業務に必要な経営資源」をリスト化し、最低現必要なリソースについて、被害情報を素早く把握できるようにする。 ・建物:オフィス、店舗、工場の状況 ・物 :設備、什器、機材の状況 ・情報:基幹システム、業務システム、個人PCなどの状況 ※人の状況については安否確認の項目で確認する |
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社外状況 |
上記同様、社外経営資源についても被害の状況を確認する ・電気、ガス、水道、その他インフラ(業務に必要なもの) ・仕入先、取引先、顧客などの状況 ・外注先、パートナー、Webサービスなどの状況 ・地域型事業の場合は顧客の被災状況を確認 |
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BCP発動判断 |
被害情報を元に、平時の延長で業務再開を行うかBCPを発動して非常事態体制を取るかの判断を行う ・中核事業の優先順位、目標復旧時間、目標復旧水準 ・BCP発動時の組織体系、連絡形態、平時体制へ戻す基準 |
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外部告知 |
意思決定の結果を、速報として顧客・取引先へ伝達する ・連絡先のリスト、連絡手段 ・自社サイトの更新手順、管理会社との連絡手段 |
災害時に役立つ「
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