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組織の形態について考える

[fa icon="calendar"] 2018/07/03 12:00:00 / by 高橋昌也

高橋昌也


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組織の形態

 これまで組織で働く個人という前提で自己啓発について話を勧めてきました。ところで、皆さんは組織というとどのような形を思い浮かべますか。

いわゆるピラミッド型の組織でしょうか。私が働いてきた二つ会社、百貨店の三越、ディズニーランドの運営会社のオリエンタルランドは、何れもピラミッド型の組織です。

組織自体が大きく、沢山の部門があり、階層も多く上下関係がはっきりとしていました。上司がいて、部下がいて、管理職がグループをまとめていました。規模の大小はあるにしても、取引先を始めとする他の会社も同じようにピラミッド型の組織形態を持つところばかりでした。

ただ組織にはピラミッドではないフラットな形態の組織もあることは知っていました。そしてこの春、初めてそのような組織を持つD社のT社長の話を聞くことができました。

 

D社の概況 

 T社長は、22歳でインターネットメディアの会社を起した青年起業家でした。しかし程なく厳しい現実に直面したそうですが、そのときは、保身ばかりを考えていたといいます。

「仕事は命よりも重い」中小企業経営者の父親のその言葉に、再度必死の努力をしますが事業は軌道に乗ることは無かったそうです。

それでもその事業を買収したいという企業が現れ、売却によって借入金を清算し、自身が生み出したサービスを見送ることができたそうです。この経験が、ホラクラシー経営のD社を生み出すきっかけになったといいます。D社は、不動産業界を中心として、まだ未整備な部分のデータサービスをする会社です。

  企業の存在意義は「より良い世の中にするための事業を長期に渡って営み、その結果として会社にかかわる全てに貢献すること」だとT社長は言います。そして全てとは、顧客や株主、社員とその家族だけでなく、地域社会や国家、自然環境まで含みます。

これまでの経営では軽視されがちだった「会社に係る全て」を考えた結果、D社のワークスタイルはたいへん特徴的なものになったとT社長は続けます。それが「ホラクラシー経営」と呼ばれ最近日本でも注目されている、フラットな組織の経営スタイルです。

自由で自律的なワークスタイルが企業を支える源になりますが、そこにはそれに伴う責任と高い能力が要求されます。

 

 ユニークな経営

 T社長から聞いたD社のユニークさは、次のようなものがあります。従来の組織しか知らない私には理解するには時間がかかりそうです。

◆(情報は全て公開)

ホラクラシー経営実現の大前提は、「全ての情報がオープンにされていること」で、財務・給与情報、意思決定プロセスなど企業情報は全部社内に公開されます。

◆(働く時間、場所、休みは自分で決める)

 D社は、人の管理をしません。自分を管理するのは自分自身であるという考えからです。このような下での仕事は、メンバー全員が自然に、もっているポテンシャルを最大限発揮できるようになります。いつ、どこで働くか、休暇の取り方も全てが自由だそうです。

◆(肩書は自由)

D社には上下関係がありません。仕事は役割分担であり、その役割も肩書も自分で考えるのです。指示命令の概念がなく、全員が組織のために最適だと考えられる行動をとります。

◆(起業、副業は自由)

D社では、その人の能力が最大限に発揮されている状態が「働くしあわせ」と捉え、個人の能力発揮の手段としての企業や副業は、本人や会社、社会のためにも正しいことと考えています。

◆(お金の使い方会議)

自由で責任ある仕事の実現のために、半年に一回の「給与会議」で皆で給料を決めます。その人がもつ生産性について、市場価値と社内価値の両面から見ることで、給与の金額は適正に自然に決まるそうです。

◆(社長役員は選挙で決める)

ホラクラシー経営では、責任の所在や意思決定が組織全体に分散しているため代表や役員は必要がないといいます。しかし現行法で株式会社には1人以上の取締役が必要なことから、D社では一年ごとに選挙で決めることになっています


啓発と開発

 さてT社長の話のポイントを一部書きましたがいかがでしょうか。そこに身を置くとしたら、その人はどのような在り方をすればいいのでしょう。

潜在能力は価値として考慮はされません。将来に対する期待も考慮されません。その人ができることで何を為したか、何を貢献したかがストレートに問われる組織なのです。

貢献は、客観的な事実と定量的なデータによって判断する実力主義の場です。給与は、他者評価と相場から自然に決まる仕組みで、自己評価も自己アピールも不要です。

大切なのは、他者からの指摘を受け入れる姿勢とエゴに捕らわれないことだそうです。

 

ホラクラシー経営のD社は、個人が責任をもって自由に仕事ができる組織ですが、旧来の組織の在り方とは、全く異なる価値観の仕事の場だということを学びました。T社長は、ピラミッド型の組織やその在り方を否定するものではないとしながらも、これから時間はかかるが、ホラクラシー経営の組織への移行が進むでしょうと話していました。

 このような中で、もちろん個人の自己刷新は不可欠ですが、それは理解を深める「自己啓発」というレベルではなく、作り上げて実用化する「自己開発」でなければ何の役にも立たないということを痛感したT社長の話でした 

Topics: 自己啓発

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高橋昌也

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