Bitis ブログ

　前回のコラムでは、大地震の「前震」を掴むことの難しさを、クイズ形式で知っていただきました。今回はもう少し話を深掘りし、「地震予知」の実情についてご紹介をいたします。…といっても、トンデモ地震予知サービスなどのご紹介ではありませんので、ご安心ください！

■役立つ地震予知・デマとしての地震予知

　さて、「地震予知」について法律的な定義がある訳ではありませんので、言葉を使うのは個々人の自由です。一方、気象庁の見解では「地震予知とは、地震の生じる「時」「場所」「大きさ」の3つの要素を精度良く限定して予測すること」と示されています。「いつ・どこに・どのくらい」の要素がそろっていない情報は「予知」ではないということですね。

　実際、日本は地震大国ですので、地震の「大きさ」を指定しなければ、誰でも適当な予知を成立させることができてしまいます。例えば『1ヶ月以内に・首都圏で・地震が発生します』など、大きさを問わない予知であれば、高い確率で生じてしまうのが日本なのです。しかし、当然ながらこのような情報には意味がないことは、お分かりいただけるかと思います。

　地震予知を、社会的な防災・減災に活用できる情報にするのであれば、

• M6以上の大地震について
• 1週間以内程度の範囲で
• 市町村単位の震源を特定する

　このくらいの精度の情報が出せれば、現在の天気予報・台風情報なみに活用することができますが、これよりも精度が甘くなると、なかなか日々の行動を変えるところまでには到らないということになります。

　一方、現在の科学的な知見においては、上記のような精度の地震予知を行うことはできていません。そのため、「いつ・どこに・どのくらい」の3点がそろった予知情報は基本的にデマ情報と言うことになりますし、逆にこの3要素のいずれかの要素が欠けている予知情報は役に立たない情報になるということです。使える「地震予知」情報は、現在の所存在しないというのが実情なのです。

■規則性から次の地震を探れないか

　では、地震予知が難しいとして、過去に発生した大地震を統計的にみていくことで、規則性などを探ることはできないのでしょうか？月別・時間帯別などで、注意すべきタイミングが分かればこれは確かに有益です。例えば関連したお話として、次の様なネタがあります。

　直近で発生した大地震で、「46分」に発生したものがいくつかあることから、毎時46分は大地震の発生に注意しよう…というネタです。これが事実であれば防災的には有益なのですが、実際に過去100年間に発生した大地震で統計を取ると、次のようになります。

　毎時0分から59分まで、何分に大地震が発生したのか、集計して並べるとこのようになります。規則性などはなく、基本的には常に警戒が必要ということになります。では、「分」ではなく「時間」で見た場合には規則性などがないでしょうか。

　大地震が朝や夜、いつ発生しやすいのかを時間帯に見ても、とくに規則性は見られません。24時間常に計画が必要ということです。最後に月末・月初について見てみると次のようになります。

　毎月1日から末日まで、大地震が発生したタイミングを並べるとこのようになります。11日が多いのですが、これは2011年の東日本大震災の影響です。当日だけでも10回以上、マグニチュード6以上の「余震」が生じるという、文字通りの巨大地震だったため、過去100年程度の統計においては影響をもたらしてしまっております。

　このように、現在の科学的な知見においては、社会的に役立つ「地震予知」の運用や、地震発生の規則性の発見などは行えていません。将来的にこうした情報が得られるようになれば有意義なことですが、現在においては、「いつでも・どこにでも」大地震が発生するという意識で、日々の対策等を行うしかないということになります。室内の安全対策や防災備蓄など、ぜひご確認ください。

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