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「巨大噴火」による影響・前編 トンガ諸島における巨大噴火と津波について

[fa icon="calendar"] 2022/02/15 11:00:00 / by 高荷 智也

高荷 智也


トンガ噴火  

 
 2022年1月15日、めったに生じない「自然現象」が発生し、広範囲に「災害」となり襲いかかりました。フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の巨大噴火です。今回のコラムでは、この噴火と津波にまつわるお話をいたします。

 

■トンガ諸島で生じた巨大噴火について
 
 2022年1月15日、ニュージーランドの北西に位置するトンガ諸島、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山で大規模な噴火が発生しました。この噴火は海底火山によるもので、噴煙の高さは最大で35,000mに達し、成層圏にまで巨大な噴煙の傘が到達しました。

             図1:気象衛星ひまわりが捉えた噴煙

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 火山の噴火の規模は、VEI・火山爆発指数という値で示されることがあります。VEIは0から8までの9段階に区分されていて、今回のトンガ諸島の噴火はVEI6程度だったと想定されています。(記事執筆時点)
 VEIは数値が1増えると、規模がおおよそ10倍程度になりますが、例えば…

・ 戦後最大の死者を生じさせた噴火、2014年の御嶽山噴火はVEI2
・ 大火砕流で多くの犠牲者を生じさせた1991年の雲仙普賢岳噴火はVEI3
・ 全国の海岸へ軽石を漂着させた2021年の福徳岡ノ場噴火はVEI4

 さらに、今噴火が発生した場合には首都圏へも降灰で大きな被害を与えることが想定されている富士山。この噴火のモデルとなっているのは、1707年に発生した宝永大噴火ですが、この時のVEIは5と想定されています。

 最も最近に生じた、VEI6レベルの噴火は、1991年に発生した、フィリピン・ピナツボ火山の巨大噴火です。VEI6以上の噴火が生じた場合、火山の周辺にはもちろん大きな被害が発生しますが、噴火の様相によっては地球規模の寒冷化が生じるなど、気候にも影響を与える恐れがある自然現象が、巨大噴火というものなのです。(※寒冷化についてはコラムの後編でお話します。)

■トンガ諸島で巨大噴火が発生

 1月15日の巨大噴火、発生直後の段階では、火山学者や防災関係者以外の方にはそれほど注目されてはいませんでした。この噴火が多くの方に注目される要因のひとつが、日本全国に発表された津波注意報・警報の存在です。
 恐ろしい災害に発展することのある津波は、大地震以外でも発生することがあります。例えば大規模な地すべりによる土砂の海面へ突入した場合、頻度は低いですが隕石などの天体が海面に衝突した場合、そして今回のような、海底火山の噴火によるものです。
 
 トンガ諸島の噴火は、日本時間で2022年1月15日の13時頃に発生しました。この噴火はあまりにも巨大であったため、人工衛星などでもはっきり捉えられており、即座に世界中に噴火発生の報道がなされました。

■影響は軽微と想定された「津波」について

 海底火山で噴火が生じた場合、津波が発生する可能性は当然考えられますので、気象庁でも即座に津波の影響調査が開始されました。津波が移動する速度は海底の深さによって決まるため、地震や噴火が発生した場所が分かれば、即座に日本への到達時間も分かります。
 その結果、もし津波が発生していたと仮定した場合、トンガ諸島からおよそ8,000km離れた日本沿岸に津波が到達する時間は、およそ10~11時間後、日本時間で深夜23時から24時頃になると、噴火後の早い段階で判明したのです。

 トンガ諸島で発生した津波は、日本へ到達するまでにスバ、ナウル、サイパンといった各地域を通過しながら進みます。そして噴火後、おおよそ理論値通りの時間に、各国で潮位の変動が観測されました。しかしこの高さは30センチ程度と小さく、これが日本に到達しても被害が発生する可能性は低いと想定されました。
 そのため、1月15日の19時頃、気象庁から「津波による影響は軽微」という発表が出され、噴火による日本への影響は「様子見」ムードとなったのです。この時点におけるこの発表は、過去の経験則に基づく妥当なものだったと言えます。

■未知の現象にアドリブで対応した気象庁

 ところが、この発表のあと事態は動きます。日本国内で最もトンガ諸島に近い場所にある、伊豆・小笠原諸島の父島などで、20時頃から海面の潮位変動が始まり、さらに全国の海岸でも21時過ぎから潮位の変動が観測され始めました。
 仮に津波が発生していたとしても、到着する時刻は23時過ぎと想定されていたことから、この時点では「謎の潮位変動」という扱いをされていましたが、現実問題としてこの潮位変動は時間がたつごとにドンドン大きくなっていきました。

 とりわけ、鹿児島県の奄美大島にある小湊漁港では潮位変動が1mを超えるなど大きな影響となり、「津波」ではないものの潮位変動がさらに大きくなった場合は、被害の発生も想定されるという事態になり、気象庁はある決断を行います。
 「津波」が生じた訳ではないが、「謎の潮位変動」が発生し、これがさらに大きくなると被害が生じる恐れがあるため、「全国の海外付近で同時に生じている危険」を知らせる手段として、津波警報を発表することにしたのです。

図2:実際に発表された津波警報・注意報

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 これは、気象庁が持っている「危険を知らせる仕組み」の中で、津波警報が最も適していると判断されたためです。もちろん、「津波ではない現象」に対して、既存の津波警報が用いられたのは初めてのことで、これは気象庁のナイスなアドリブであったといえます。

 
 その後、幸いなことに大きな被害は生じませんでしたが、津波は地震以外でも起きるということを知っておき、突然津波警報が出た場合は、高台などに避難をするのだという心構えをしておくことは重要だと言えます。

 

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