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BCPの前提!企業の防災対策 第1話「企業を取り巻く防災対策の現状」

[fa icon="calendar"] 2017/06/20 11:02:45 / by 高荷 智也

高荷 智也


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企業を取り巻くBCP策定の現状

未曽有の災害となった2011年の東日本大震災から5年、2016年は熊本地震や鳥取地震が発生し大きな被害を残しました。続く2017年も、大規模な火災が発生したり周辺国情勢の緊張が高まったりと、企業を取り巻くリスクは引き続き高い状態にあります。

 

常に見直しが求められるBCP

熊本地震では、観測史上初めて最大震度7の地震が連続するなどして被害が大きくなりましたが、大規模な災害が発生するたびに新しい「想定外」が生じ、BCPの見直しが行われています。被害想定で取り上げるべき災害事例は常に新しくなるため、BCPの新規作成を行う際・見直しを行う際、共に最新情報を参考に検討する必要があります。


見直す大企業、策定する中小企業

日本でBCPを策定する際に資料としてよく用いられる「事業継続計画策定ガイドライン(内閣府)」は、現在第3版(平成25年版)が最新版です。ガイドラインによれば、大企業の7割はすでにBCPを策定済か策定最中であり、今後は策定したBCPをいかに運用すべきかを考えていく段階であるとされています。一方、中小零細企業においては、いまだBCPの策定や防災対策が未実施である場合が高く、今後の普及が望まれる段階にあります。


まずは防災対策から取り組む

策定済のBCPを見直す際、またこれから新規に策定する際、注意すべきポイントは様々ですが、まずは防災対策に関する取り組みについて確認をすべきです。BCPは被害が生じてから必要になる計画ですが、防災はそもそも被害を最小化するために実施します。BCPを積極的に無駄にする環境を作るために、まずは防災対策から取り組むことが望ましいのです。


 
事業継続戦略としての防災

防災対策はBCPの一部であり前提です。BCPの一部としての防災は、災害から建物や資機材を守るための「事業継続戦略」の一環として行います。一方前提としての防災は、大規模災害から「従業員の命を守る」ために実施します。まずは事業継続戦略として実施する、自社の事業の中でも特に重要な箇所へ集中的に行われる、設備を中心とした防災対策を考えてみましょう。


BCPでは守るべき事業・業務に優先度を付ける

非常時は利用できる人・物・資金などの経営資源が限定されるため、全ての業務を同時に復旧させることは困難です。そこで事前に復旧の優先順位を定めておく必要があります。最短で復旧をすべき「中核事業」を定め、この事業を構成する「重要業務」を特定し、さらに業務を行うために必要な「経営資源」を洗い出し、この経営資源を集中的に復旧させるための計画を立てることになります。


防災対策には優先順位を付けて実施

優先的に守るべき経営資源に対しては、そもそも被害にあわないようにするための防災対策が必要です。しかし設備に対する防災対策の中には高額な装置を購入したり、または建物そのものに手を入れたりしなくてはならない場合もあり、コストと時間がかかります。そのため平時の防災対策においても、優先順位にしたがって順次対策を講じていくことになります。


設備に対する防災対策の落とし穴

ところが、この事業継続戦略の一環として行う防災は、「中核事業」の維持に必要な設備や人に対する対策が優先されるため、中核事業以外の経営資源に対する守りは後回しになります。BCPでは「人」も経営資源のひとつとして考えるため、中核事業に関与しない従業員については、防災対策も後回しになってしまう、という問題も生じます。そのためまず、事業継続の優先順位とは無関係に、BCPの大前提として「全ての従業員の命を守る」ための防災対策が必要になるのです。

 


 

従業員の命を守る防災

BCPの性質上「人」という存在は「代替可能な経営資源」として扱われます。大地震で不幸にも従業員に対する被害が生じた場合、代替人員とマニュアルでどう業務を再開するかを検討するのが、BCPにおける「人」の扱いなのです。

 

従業員が死なないための準備

一般的に防災対策と言えば、まず水や食料の備蓄が思い浮かびます。2013年に東京都が施行した帰宅困難者対策条例でも、大地震に備えて備蓄を行うように企業へ努力義務を課しています。しかしこうした防災備蓄を必要とするのは幸運にも大地震で「死ななかった」方々であり、優先すべき対策は「大地震で死なない」ための準備です。企業における防災においても「従業員の命を守る」対策から取り組む必要があります。


まずは初動対応としての防災計画を立てることが重要

BCPでは、大規模災害が生じた直後の行動をスムーズに行うため、初動対応のフローをまとめます。事業の復旧計画をまとめる事業継続戦略と異なり、初動対応の基本は企業の規模や業種によって大きくかわるものではありません。救助・避難・応急処置・初期消火・情報収集といった初期対応の計画、命を守るための準備がきちんとできているかどうかを、まずBCPの見直し・策定時のポイントにするとよいでしょう。

 

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企業におけるBCP対策の一環として「初動対応マニュアル」の作成は必要となってきます。
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