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水害に備える!新しくなった避難情報活用のポイント(前編)

[fa icon="calendar"] 2021/06/09 10:12:20 / by 高荷 智也

高荷 智也


水害対策  

 記録的に早い梅雨入りを迎えた東海以西ですが、関東以北についてはこの記録に続くことなく、梅雨はどこに行ってしまったのかという状況が続いております(ちなみに私は静岡県在住ですので早い梅雨入りを迎えた地域の人間です)。
しかし、関東の梅雨入り平年値は6月7日頃、東北北部は6月15日頃ですので、まだまだおかしな状況ではありません。
今回は、本格的な水害シーズンの前に知っておくべき、最新の「水害避難」「水害情報」について紹介します。

■60年の役目を終えた「避難勧告」

 2021年5月20日、日本の法律・災害対策基本法が改正され、「避難勧告」という言葉が廃止されました。1961年(昭和36年)に災害対策基本法が制定されて以来、60年にわたり私たちの生活の中で、災害の危険を伝え続けてくれた情報に敬意を表したいと思います(ありがとう避難勧告…!)。

 ところで、この「災害対策基本法」という法律は、日本の様々な防災施策を定める根幹となっており、自治体が避難所を設営したり、水害シーズンに「避難勧告(廃止)」や「避難指示」といった避難情報を発表したり、といった様々な活動の根拠法になっています。なぜこのような法律が作られたのでしょうか。

 1959年(昭和34年)9月26日、日本災害史上最悪の水害「伊勢湾台風」が上陸し、甚大な被害を生じさせました。死者・行方不明者は5,000名以上、これはパンデミックをのぞく戦後の自然災害の被害として、2011年の東日本大震災、1995年の阪神・淡路大震災に次ぐ3番目の規模となっています。
 この伊勢湾台風のあまりにも甚大な被害を受けて、将来の日本を自然災害の脅威から守ろうとして作られた法律が「災害対策基本法」であり、その後も大きな災害が発生するたびに改正を繰り返し、より効果のある防災法律として運用されるように整備されて続けています。その最新改正が、2021年5月20日となります。


■「緊急安全確保」「避難指示」「高齢者等避難」

 今回の法改正では、いくつかの項目が新しくなっていますが、その中で私達の生活・仕事に直結するのが「避難情報」の改正です。避難に関する情報は、「警戒レベル」と呼ばれる1~5の数値と共に発表されますが、災害の恐れがあり避難を開始すべき状況はレベル3以上となります。

73_1                                                                                        図:新しくなった避難情報


警戒レベル3…に該当する情報は、これまでの「避難準備・高齢者等避難開始」という言葉から、「高齢者等避難」という言葉に変わりました。家庭や会社内に、高齢者・介護者・障がい者の方、赤ちゃんや乳幼児・妊婦の方など、避難に時間がかかる方々が移動を開始すべき状況です。

警戒レベル4…に該当する情報は、これまでの「避難指示(緊急)」および「避難勧告」から、「避難指示」に一本化されました。自宅や事業所の建物が、洪水や土砂災害の危険のある地域に所在し、そのまま留まると命に危険が生じる場合、全員が移動を開始し、そして完了させるべき状況です。逆に言うと、頑丈な建物の上層階にいる場合は中に留まる選択肢をとることもできます。

警戒レベル5…に該当する情報は、これまでの「災害発生情報」という言葉から、「緊急安全確保」という言葉に置き換わりました。このレベルでは「特別警報」なども同時に発表されている可能性がありますが、文字通り命を守る行動をする段階です。避難場所などへの移動が間に合わない場合は、建物の上層階などによじ登って難を逃れる、そうした状況が「緊急安全確保」となります。


■レベル4とレベル5の間には深くて長い溝がある

 なお、前述の表を見ていただきますと、レベル4とレベル5の間に、「警戒レベル4までに必ず避難」という言葉が入っているのに気づきます。これは、レベル4までの状態と、レベル5というのは全く異なる状況であることを強調してのことです。

 レベル3は「高齢者等避難」、レベル4は「避難指示」と、どちらも「避難」という言葉が入っていますが、レベル5は「緊急安全確保」と、「避難」という言葉が入っていません。これは、レベル5の段階はすでに目の前に危険が迫っている状況が想定され、特に屋外を歩いて避難場所などへ移動する「立退き避難」「水平避難」が手遅れである可能性が示唆されているためです。

 屋外の「避難」はレベル4までに完了させる。避難が遅れて、レベル5の段階で自宅や事業所が危険な状況になっている場合は、その場で最大限命を守る行動をする、ということが求められます。具体的に言えば、レジャー用のライフジャケットを着て屋根によじ登るとか、空のペットボトルを体に巻いてベランダから救助を求めるとか、そういう状況もあり得るということです。

「警戒レベル4・避難指示までに必ず避難」を、今後の指針としてぜひ覚えてください。



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