◆POPを活用した実証実験~その20~◆
経済学を2つに分けるとすると、マルクスやケインズに代表される伝統的な経済学と、カーネマンやセイラーに代表される行動経済学です。
それぞれを簡単に比較すると、伝統的な経済学の分析によると人間は、合理的な判断をする生き物と設定されています。行政や学術などのデータに基づいているため長期的な戦略に適しています。
一方、行動経済学の人間像は、感情的な生き物で不合理な判断をする生き物と設定され、現場や売場から収集したデータに基づいているため短期的な戦略に適しています。
昨今、とても注目されているのが行動経済学で、特に2017年にノーベル経済学賞を受賞した「ナッジ理論」です。
一言でいうと、強制ではなく自発的に望ましいと思われる選択へ行動を促すことです。ナッジとは〝肘で軽くこづく〟という意味があります。
親の象が小象を後ろから鼻で誘導するという例えもよく使われます。
人は強制されると反発します。このことは読者の皆さんも経験があると思います。
実は「ナッジ理論」が大活躍している事例が増えています。特に行政などの公共サービスを提供する場面で活用され始めています。
市民への情報やサービス提供の仕方、課題解決に向けた取り組みが徐々に変わりつつあります。
事例とともに「ナッジ理論」をみていきましょう。
<事例1:迷惑な放置自転車が減少>
全国の行政が頭を悩ませている問題の一つに、放置自転車があります。駐輪場ではない場所にとめる市民が後を絶ちません。
これまでであれば、強制による自転車撤去や、管理者をおいてとめないように指導するなどが解決策でした。
この解決策には市民の血税が使用されます。本来、もっと重要な課題に生かしたいところです。
ポイントは、決して強制による解決策ではないことです。市民や消費者が自転車をとめることを自分の意思で自発的に避ける行動を促す解決策であることです。
具体的な解決策は、画像の貼り紙を掲示しただけです。
従来であれば「ここにはとめないでください!」「歩行者の邪魔になります」などが定番でした。この手のメッセージは反発を生むだけで、一向に効果につながりませんでした。
画像の貼り紙は、誰の反発も生まず、自発的に望ましい行動に至った事例です。
<事例2:社会保障費削減の取り組み>
医療費や社会保障費の予算は年々増えています。このままでは国の借金は拡大し続けてしまいます。国民一人一人の努力は限られていますが、地道な取り組みが全国へ広がっています。
国民の健康を増進させることで病院に行く機会を減らす取り組みにナッジ理論が採用されています。
国民の意識や行動の結果が健康につながるように、公共交通機関でよく見かける事例です。
この表示を見かけると、エレベーターやエスカレーターを使わないで階段を利用する人が少しずつ増えていきます。
消費カロリーを見える化することで自発的な行動を誘発し、「今日は階段にするか!」という意識の変化にも貢献しています。
<事例3:新しい需要を創造し経済効果に貢献>
多くの人たちはマジョリティ(主流派)の説得力に従う特性があります。文化や風習はこの特性の代表的な行動習慣で、マジョリティに従った結果といえます。
恵方巻やハロウィン、バレンタインなどのイベントは、マジョリティに従った人がつくったといえます。恵方巻は関西地方の節分の風習でマイノリティ(少数派)な行事でした。しかし、大手コンビニがこの風習に注目し、マジョリティの説得力に従うシカケを数年かけて作り上げたのです。
ここ数年のハロウィンの盛り上がりも、外国の風習をマジョリティのイベントにすることで、強制ではなく当然のように楽しんでいます。
このように多くの事例が生まれています。今回ご紹介した事例も自社や自社の業界に落とし込むことで身近に感じられます。
感じるだけではなく、実践することでオリジナルの事例を蓄積していくことで自社のノウハウとなります。
<メソッド21>
課題解決にナッジ理論を採用する傾向がみられます。市民や消費者など対象相手の感情を理解することで、親の象が小象を自発的によりよい選択へと行動を促すようにすることが可能です。
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