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「巨大噴火」による影響・後編 火山の冬による地球寒冷化について

[fa icon="calendar"] 2022/02/22 11:00:00 / by 高荷 智也

高荷 智也


火山の冬  

 
 前回のコラムでは、2022年1月15日に発生した、トンガ諸島における巨大噴火と、日本で発表された津波警報を取り巻く状況について解説をいたしました。
今回は、より大きなお話…火山による「地球規模の寒冷化」のお話です。

 

■「火山の冬」現象とは?

 巨大な噴火が発生すると、しばしば「火山の冬」と呼ばれる現象が生じます。火山の冬とは、巨大噴火による噴出物が太陽光を遮ることで、地上が寒冷化して農作物に影響が生じたり、太陽光発電などに影響を与える自然現象のことを言います。
 通常、地上には太陽からの光と熱が到達していますが、巨大噴火により成層圏へ大量の噴出物がばらまかれた場合、噴出物の量や種類によっては、太陽光の一部が反射されて宇宙へ戻ってしまい、地上へ届く光と熱が減ることがあります。

 火山の噴火の規模は、VEI・火山爆発指数という0から8までの数値で示すことがあります。(※詳細は前回のコラムをご覧ください。)このVEIで「6」以上の噴火が生じた場合、火山の冬現象が生じる可能性があり、これは過去に何度も発生してきた、現実の災害なのです。


■過去に発生した「火山の冬」現象について

 一番最近生じた「火山の冬」現象は、1991年にフィリピンのピナツボ火山で発生した、VEI6の噴火によるものです。この時には、北半球の平均気温が0.5度ほど低下し、日本でも冷夏となりました。その結果、記録的なお米の不作が生じ、タイなどからお米を緊急輸入する「平成の米騒動」が発生した災害として記録に残されています。

 1883年には、インドネシアのクラカタウ火山がVEI6の噴火を起こし、地球の平均気温が1.2度ほど低下する火山の冬現象が生じました。世界中で大凶作が生じ大きな影響をもたらしましたが、巨大噴火による噴出物は、時に夕焼けを異常なほど鮮やかにするという効果をもたらすこともあります。この夕焼けが描かれた有名な絵画が、ムンクの「叫び」という作品なのです。

 1815年にはインドネシアのタンボラ火山で、VEI7という超巨大噴火が発生しました。これは千年に一度の規模の噴火でしたが、地球の平均気温が1.7度ほど低下する強烈な火山の冬現象をもたらし、「夏がこなかった年」として、各地で大凶作・深刻な飢饉を引き起こしました。北米などでは5月に積雪、8月に河川の凍結などが生じた記録が残っています。

 1783年には、アイスランドのラキ火山でVEI6の噴火が発生しました。この年、日本でも浅間山が噴火を起こしており、天明の大飢饉に繋がるなど大きな影響を与えています。ラキ火山の噴火では、アイスランド住民の2割が餓死、またこれによる凶作などが、フランス革命の要因のひとつになっていると考えられています。
 また、人類に関わる最悪の火山の冬現象としては、およそ7万~7.5万年前に、インドネシアのトバ火山で発生したVEI8の超・超巨大噴火によるものがあげられます。この噴火では、地球の平均気温が3~5度程度低下、これが最大10年程度継続し、人類があやうく滅亡しかけたという想定がされております。人類の歴史はまさに火山の冬と共にあったのです。

■トンガ諸島の噴火で「火山の冬」による寒冷化は起きるか?

 では、2022年1月15日に、トンガ諸島で発生したVEI6と想定される巨大噴火では、火山の冬による寒冷化が生じるのでしょうか。結論から言えば、今回の噴火では起きないと考えられています。噴火直後には「令和の米騒動」か、という報道もありましたが、これは恐らくありません。

 火山の冬現象は、巨大噴火が起きれば必ず生じる訳ではありません。地球寒冷化は、太陽光が地上に到達する前に反射されることで生じますが、噴火で放出される様々な噴出物の中には、太陽光を反射しやすいものと、あまり影響しないものがあります。

 太陽光を反射しやすい物質には、「硫酸エアロゾル」があり、これは噴火で放出される「二酸化硫黄:SO2」が成層圏に到達することで生成されるという特徴があります。巨大噴火が生じても、火山灰などは比較的早期に地上へ落ちるため、あまり寒冷化に影響しませんが、二酸化硫黄の量が多い場合は、注視する必要があるのです。

 そして、今回のトンガ諸島における噴火では、この「二酸化硫黄」の放出量が少なかったため、噴火の規模は大きかったものの寒冷化には繋がらないと考えられているのです。大きな影響を与える火山の冬現象ですが、デマに踊らされて毎回お米の買いだめをすることはぜひ控えてください。

 

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