円安(2022年11月現在)が続く中、外国に居住する方々にとって訪日がより魅力的なものとなっています。インバウンド対策の強化は、観光業や宿泊業、飲食業などの幅広い業種にとって優先事項といえるでしょう。この記事ではインバウンド対策のポイントや課題、事例について具体的に紹介しています。ぜひご覧ください。
【目次】
インバウンド対策とは
インバウンド対策とは、主に訪日外国人観光客に対する対策のことを指します。例えば、日本語が分からなくても地名が分かるように地図にローマ字表記を付け加えたり、観光地の施設で外国語を話せるスタッフを採用したりすることは、いずれもインバウンド対策です。
また、インバウンド対策は言語面だけではありません。日本に訪れたくなるような情報を発信することや、日本の文化に触れる機会を設けてリピーターを増やすことなども、インバウンド獲得に必要なことです。
観光客以外の訪日客に目を向けることも忘れてはいけません。ビジネス目的で訪日する外国人も多く、滞在中に少なくない消費額が見込まれます。過ごしやすさや便利さを提供することで、訪日中の消費が増え、関連業界の収益増につなげる対策も必要でしょう。
より一層高まるインバウンド需要
2020年以降は新型コロナウイルス感染症の流行により訪日外国人観光客は大幅に減少していますが、2019年までは毎年大幅に増加していました。また、観光客の増加に伴い、外国人観光客による消費額も増加していました。
新型コロナウイルス感染症による影響の沈静化や対策強化により、近い将来、インバウンドが増えると予想されます。また、円安により、コロナ禍以前よりも訪日しやすい経済的環境が整っています。今後もより一層インバウンドのニーズは高まるでしょう。
2013年 |
2015年 |
2017年 |
2019年 |
|
訪日外国人旅行者数 |
1,036万人 |
1,974万人 |
2,869万人 |
3,188万人 |
旅行消費額 |
1兆4,167億円 |
3兆4,771億円 |
4兆4,162億円 |
4兆8,135億円 |
インバウンドマーケティングの必要性
インターネットの普及により、消費者は必要とする情報を簡単に入手できるようになりました。関心のある分野を自分で検索し、自力で必要な情報を獲得します。
この流れを活用するためにも、外国人観光客に向けて日本滞在中の過ごし方や買い物についての情報を積極的に発信することは必要不可欠なことだといえるでしょう。また、外国人観光客の行動や情報入手パターンを分析し、サービスや商品の開発・改善に活かすこともできます。
何もせずに観光客が訪れるのを待つ時代は終わりました。インバウンドによる収益増を期待するのであれば、インバウンドに向けたマーケティングを積極的に行い、外国人観光客が訪れやすい体制を作ることが必要とされています。
インバウンド対策における3つの課題
インバウンド対策を進めることで、訪日外国人観光客と旅行消費額の更なる増加を期待できます。しかし、次の3つの状況が日本のインバウンド対策を妨げている点に注意が必要です。
- インフラ整備の遅れ
- インサイトのリサーチ不足
- インバウンド人材の不足
それぞれの状況は、インバウンド対策推進のために解決が必要な課題でもあります。具体的にどのような点が課題といえるのか、具体例を挙げて見ていきましょう。
インフラ整備の遅れ
都市部や有名観光地では観光インフラの整備は進んでいますが、あまり観光客が訪れないと考えられる地域では整備が遅れています。例えば、日本語以外の言語の対応が進んでいない地域や、英語以外の外国語への対応が遅れている場所も多いです。
外国人観光客のなかには、積極的に地方に行き、田舎や秘境を楽しみたいと考える方も多くいます。しかし、観光インフラが進んでいないことで「日本は都市部以外は過ごしにくい」というイメージがついてしまうと、旅行先に日本を選ばなくなる方もいるでしょう。
また、交通機関が分かりにくいという外国人観光客の声もあります。切符の買い方や乗り換え方に戸惑う方も多いため、図や動画などを使って紹介することが必要です。
キャッシュレス化が遅れている点も、インバウンド対策を妨げていると考えられます。現金以外に対応していない施設や店舗、特定の交通カード以外では乗れない路線バスなどもあり、利用しづらく感じる外国人観光客も少なくありません。
現在、分からないことはインターネットで調べるというスタイルは世界共通です。しかし、日本ではフリーWiFiを利用できる場所が欧米と比べると多くはなく、インターネットで検索したいのにできない状況も生んでいます。
リモート接客や観光アプリによる「観光客支援」
観光DXは観光客の支援にも活用されています。例えば、高精度の画像や会議アプリを使ってたリモート接客で、リアルタイムかつ双方向性のオンラインツアーも実現しています。スタッフは現地、観光客は自宅と場所は異なりますが、デジタル技術によってスムーズな観光が可能です。
また、観光地の情報を手軽に伝える観光アプリも、観光客にとってなくてはならないアイテムです。アプリからリアルタイムの天候や、気温や天気に配慮した観光ルートの提案、道に迷わないためのナビゲーションなどの豊富なサービスを利用できます。
インサイト(購買意欲の核心)のリサーチ不足
訪日外国人観光客が求めていることやインサイトについて、正確に把握できていない点も課題です。
例えば、日本政府では「クールジャパン戦略」を立て、アニメやポップカルチャーなどで格好良い日本を打ち出し、インバウンドの増加を目指しています。もちろんアニメなどの日本文化が好きで訪日する外国人もいますが、すべての外国人観光客がポップカルチャーに触れたいと考えているわけではありません。
秘境や田舎に行きたいと考えている方や、高級旅館でラグジュアリーな滞在を楽しみたいと考えている方もいます。インバウンド対策を進める前に、日本を訪れる外国人観光客がどこに行きたいと思っているのか、また、どのような過ごし方やショッピングを期待しているのかについてより深くリサーチすることが必要です。
インバウンド人材の不足
インバウンド対策の推進には相応の人材が不可欠です。例えば、地方で観光インフラを整備するためには、外国語を話せる人材やデジタル分野で専門性を有する人材などが必要となります。
しかし、多くの地域では観光客に対応する人材が不足しており、外国語やデジタルなどの専門的な人材まで確保するのは至難の業です。人材不足をどう解消するか、また、専門的なスキルを持つ人材をどのように確保するかも、インバウンド対策を進めるうえでの課題といえるでしょう。
インバウンド人材の不足は、リモート接客システムで解消を目指せます。「AttendStation®」は、アバターを介した遠隔対応でリモート接客ができるサービスです。該当言語に対応できるオペレーターに自動的に接続する「自動キャスティング」もあるので、外国語を話せる人材を集めにくい地方でもスムーズな接客を実現できます。
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インバウンド対策の4つのポイント
インバウンド対策を効率的に進めるためには、次のポイントに留意することが必要です。
- 海外市場や外国人のインサイトを把握する
- 魅力が的確に伝わるコンテンツを作成する
- 観光庁によるインバウンド補助金の利用を検討する
- 訴求したい内容がターゲットに効率的に伝わるような対策を行う
なぜ観光DXがそれぞれのメリットをもたらすのか、わかりやすく解説します。
1.海外市場や外国人のインサイトを把握する
外国人観光客による旅行消費額を増やすためには、海外市場のトレンドや外国人の購買意欲の核心についての理解が欠かせません。
日本人が「外国人が好むだろう」と思っているものやサービスが本当に外国人にとって魅力的なのか、先入観を取り払い、再考する必要があります。また、訪日外国人観光客に直接アンケートなどで質問することも、インサイトの把握に役立つでしょう。
2.魅力が的確に伝わるコンテンツを作成する
アンケートや外国人観光客の行動分析などから、インバウンド向けのコンテンツを開発し、日本の魅力が正確に伝わるように情報を発信していきます。
しかし、分析した結果は間違っていなくても、コンテンツ自体に魅力を伝える力がない可能性があるでしょう。多言語対応は当然のこととして、伝えたい内容を伝えるコンテンツになっているのか、閲覧者の反応も参考にして改善していくことが必要です。
3.観光庁によるインバウンド補助金の利用を検討する
観光庁ではインバウンド対策に活用できる補助金制度を実施しています。制度ごとに募集時期や対象事業などが異なるので、こまめに観光庁の公式ホームページを確認し、利用できる制度に申請するようにしましょう。
4.訴求したい内容がターゲットに効率的に伝わるような対策を行う
インバウンド向けのコンテンツを作成したとしても、訪日を検討している外国人が閲覧しない可能性があります。また、閲覧しても、訴求したい内容が伝わらない可能性もあるでしょう。
まずは閲覧者を増やすための対策が必要です。検索エンジンで上位表示されるようにSEO対策を実施することや、TwitterやFacebookなどのSNSを使って投稿することも求められます。
インバウンドマーケティングを成功させるための具体的な対策
インバウンドマーケティング成功のために実施できる対策としては、次のものが挙げられます。
- コンテンツやサイトの多言語化
- 訪日外国人を意識したSNSの運用
- 多言語決裁サービスを導入
- デジタルサイネージの設置
それぞれの状況は、インバウンド対策推進のために解決が必要な課題でもあります。具体的にどのような点が課題といえるのか、具体例を挙げて見ていきましょう。
コンテンツやサイトの多言語化
インバウンド向けのコンテンツやサイトが英語や中国語などの限られた言語にのみ対応していると、対応していない言語のみを理解する見込み客を逃すことになってしまいます。コンテンツやサイトを多言語に対応させ、多くの外国人が母国語で内容を理解できるようにしておきましょう。
また、コンテンツやサイトだけでなく、施設や公共交通機関のアナウンス、地図、メニューなども多言語対応しておくことも必要です。例えば、クラウド型コンテンツ配信システムサービス「PICLES」では、用途に合わせた様々なコンテンツをサイン時に表示することで効率的に外国人観光客に案内することが可能です。
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訪日外国人を意識したSNSの運用
SNSを使って情報収集する方も少なくありません。訪日外国人向けのアカウントを作成し、観光地やサービス、商品の魅力を伝える情報を発信しましょう。
テキストだけでなく動画や写真も多数含めることで、より魅力が伝わりやすくなります。複数のSNSを活用し、それぞれのユーザーを採り込むようにしましょう。
多言語決済サービスの導入
決済サービスの見直しも必要です。店舗や施設での決済方法として、クレジットカードやスマホ決済、電子マネーなども選択できるようにしておきましょう。また、決済方法についての案内を、文字や音声で多言語対応することも必要です。
デジタルサイネージの設置
施設の利用案内として多言語に対応したパンフレットを配布することもできますが、より視覚的かつ多くの情報を提供するためにデジタルサイネージを利用することもできます。例えば、案内表示を一定期間ごとに異なる言語に変えたり、利用者自身で言語や表示内容を変更できるようにしたりできるでしょう。
アバターが観光客に対応するアバターサイネージによる観光案内も注目を集めています。文字や写真だけの情報よりも、アバターが対応することで観光客は親しみやすさを感じることができるでしょう。また、個人に向けられた情報だという特別感も味わうことができます。
デジタルサイネージは観光に活用しやすいツールです。次の記事では多数の事例を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
参考記事:デジタルサイネージ:地域観光の活用事例
クラウド型サイネージ配信システム「PICLES」では、用途に合わせた多様なコンテンツをサイネージに表示し、外国人観光客に案内することが可能です。交通案内や観光地情報なども多言語で対応でき、インバウンド対策にも活用できます。
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【業界別】インバウンド対策の成功事例
インバウンド対策を実施することで、観光客の増加や地域活性化を実現した例も多数あります。3つの成功事例から、インバウンド対策の重要性や方向性のヒントを学びましょう。
インバウンド対策「観光業」の成功事例
大阪府では、SNSを活用した訪日外国人の行動分析、来日目的の国別仮説の立案、仮説に基づいたアクションプランの構築などによる戦略的なインバウンドマーケティングを推進しました。また、同時に情報ネットワークの整備や観光案内のワンストップ化なども実施し、2013年には263万人であった訪日外国人が2017年には1,111万人と、わずか5年で約5倍にも増加しました。
インバウンド対策「商業施設」の成功事例
ある商業施設では、Instagramを活用し、外国人観光客の集客に成功しています。Instagramは写真がメインのため、多言語対応しなくとも商品の詳細情報を見込み客に効率的に伝えることが可能です。また、Instagramのアカウント情報欄に商業施設の公式ホームページのURLを掲載し、気になる商品のより詳しい情報を入手できるようにしました。
インバウンド対策「地域活性化」の成功事例
香川県では、県民食でもある「うどん」に焦点を当て、「うどん県」としてのプロモーションを大々的に行いました。うどん県のサイトは多言語対応し、サイトから直接ツアーやホテル、航空券も予約できるようにし、地域活性化とインバウンド増加を実現しました。
まとめ
インバウンド対策を行うことで、訪日外国人を増やし、旅行消費額の増加を実現することができます。リモート接客システムやデジタルサイネージを活用すれば、人材が不足しがちな地方の施設や観光地も多言語対応が可能です。ぜひ紹介した対策なども参考に、インバウンド獲得に向けた戦略を練っていきましょう。
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